1977年から連載が開始された、松本零士さんの名作『銀河鉄道999』。本作は、機械の体を得るために宇宙を旅する少年・星野鉄郎と神秘的な美女・メーテルの冒険を描く、壮大なSF作品である。
2人は銀河鉄道999号に乗って、さまざまな未知の星へと降り立つ。しかしその星に暮らしている人々は、ときに地球人にとってとんでもない習慣や文化を持っていることも多いのだ。
そこで今回は、とくにインパクトのあった文化や風習のある星を紹介したい。
■やることがないと選挙でリンチ相手を決める!?「原始惑星の女王」
コミックス2巻「原始惑星の女王」では「けんか別れ」という、真っ二つに分かれている星に到着した鉄郎とメーテル。
そこは自然派と科学派に分かれている惑星だった。自然派の星に降りた2人だが、そこでメーテルは目玉の化け物のようなものたちに襲われ拉致されてしまう。その後、この星の伝説にのっとって、彼らの女王にされてしまったメーテル。鉄郎を殺そうと崖から落とすが、それはあくまでパフォーマンスで、すべてを理解しているメーテルの作戦であった。
鉄郎を無事救出したメーテルは「この星の人達は やることがないので楽しみに選挙でリンチする人間を選んでは 殺してヒマつぶしをしているの」と説明する。
しかしその後も2人は捕らわれ、メーテルが生贄になりかけるなどとんでもない展開が続く。だが、最終的にこの星は爆発してしまうのであった。
科学派と対立して原始に戻った自然派だが、そこに生きる人の知的好奇心が衰えることはなかったのだろう。それでも進歩を選ぶことはなく、退屈しのぎかのごとくリンチする人間を選んでは殺してヒマをつぶすという恐ろしい風習が残ってしまった。
また、けんか別れをした科学派の星も星中をリベットとメーターだらけにしただろうし、惑星自体が残っているかは怪しいとメーテルは言っていた。
最後に「ほどほどのいいかげんなところで 仲良く手をうって、ゆずりあって暮らすのが一番なんだ」という、鉄郎のセリフが印象的なエピソード。
対立を深め自己主張ばかりしている星に、ろくな文化はないのかもしれない。
■果てしなく続く葬式の文化「霧の埋葬惑星」
コミックス5巻「霧の葬送惑星」で、ろうそくと線香の匂いが漂う薄暗い「葬送惑星」に到着した999号。
そこで鉄郎とメーテルは黒装束に身を包んだ住民たちに襲われ、生きたまま棺桶に閉じ込められてしまう。気を失ったところを誰かに救出されたのか、辛くもその場を脱出できた2人。
実はこの星の住人たちは“お葬式の悲しいムード”が好きなゆえ、葬式を楽しむために人を次々に殺し、はてしなくお葬式を続けているという。
その後2人は再度襲ってきた住人たちに対し、弱装エネルギー銃を使って気絶させる。すると町のあちこちで鐘が鳴りはじめ、その倒れた住人たちに多くの人が群がってきた。なんと彼らは気絶した住人たちを生き埋めし、“楽しみの悲しい涙”を流すのだという。
死んでいようが気絶していようが、倒れている人であれば誰彼構わず葬式をあげる文化というのは恐ろしい。悲しい雰囲気を楽しむことが習慣になっているなんて、地球人にとってはかなり悪趣味に感じるだろう。
お葬式の在り方は、現在の地球でも時代を問わず議論されている。それでもメーテルがいう「私が死んでも、お葬式はいらないわ。ただ…いつまでも覚えていて時々思いだしてくれれば それが一番うれしい…」というセリフには、共感してしまう。