國府田マリ子に田村ゆかり、井上和彦も…超豪華声優が競演!アニメ『クレヨンしんちゃん』幻の劇中劇「不思議魔女っ子マリーちゃん」の“異常な完成度”の画像
DVD「クレヨンしんちゃん きっとベスト☆濃縮! 風間トオル」(バンダイナムコフィルムワークス) (C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

 国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』の大きな特徴のひとつが、「劇中劇」に力を入れているところだ。

 しんのすけが大好きな特撮ヒーロー番組「アクション仮面」やロボットアニメの「カンタムロボ」は、単発ではなく何度も登場し、まるまるひとつのエピソードが作られたこともある。劇場版にも頻繁に登場し、高い人気と認知度を誇っている劇中劇だ。

 一方、『クレヨンしんちゃん』の劇中劇の中で、高い完成度と人気を誇っていたにもかかわらず、再登場しないまま幻になっている作品がある。それが「不思議魔女っ子マリーちゃん」(以下、「マリーちゃん」)だ。

 劇中劇として登場したのは、主に1999年後半から2000年前半にかけての半年ほどのこと。登場回はわずか10話にも満たなかったにもかかわらず、視聴者に鮮烈な記憶を残した。放送から20年以上が経った現在も、根強いファンが存在する「マリーちゃん」について振り返ってみたい。

■変身シーンが魅力的!? CVは田村ゆかりや井上和彦ら豪華声優がズラリ

「マリーちゃん」は女の子向け特撮番組という設定だった。90年代なら『美少女仮面ポワトリン』などの「東映不思議コメディーシリーズ」、近年なら「ガールズ×戦士シリーズ」のようなイメージだろうか。

 女子向けだが、男子の隠れファンも多く、なかでも風間くんは熱烈なファンで、グッズもコレクションしている。まわりにファンだと知られたくないのに、本当は好きでたまらない風間くんの揺れる心が中心のエピソードが多い。

 しんのすけとひろしは、セクシーなライバルキャラの神無月シーラがお目当てだった(シーラは変身するとき全裸になる。特撮なのに!)。

 主人公は、魔法の修行のため、人間界の高校に転校してきた魔法界の少女「師走マリー」。本当は人を幸せにするのが目的なのだが、なぜか毎回のように怪物と戦っている。

 変身のかけ声は「ミラクル ミラクル クルクルリン、純情変身・マリー!」。名乗りの背後で爆発が起こるのが特撮番組らしい。そして、魔法を放つときのかけ声は「届け、乙女の祈り!」。

 戦っている最中に正体がバレてしまので、魔法で友人たちの記憶を消してから再び同じ高校に転校し、人間関係をやり直さなければいけないという、ちょっとせつないオチがつく。

 声優も作画も、とてもおまけの劇中劇とは思えないほど力が入っていた。とくにキャスティングはものすごく豪華。マリーちゃん役に國府田マリ子、呪いでラッコの姿に変えられた弟・セイン役に大谷育江、マリーの理解者のクラスメイト・ナオキ役に鈴村健一、なぜかユニゾンで喋るクラスメイト・ミカ役とリカ役に杉本ゆうと田村ゆかり、ライバルのシーラ役に川村万梨阿を起用。

 さらに戦闘中にどんなことでも解説してくれる担任の山岡先生役に井上和彦という充実ぶりである。井上はもちろん『美味しんぼ』の山岡士郎役にひっかけたキャスティングだろう(敵の怪物はタコやイカなどの食材系の動物が多く、解説もおのずと山岡士郎の口調になる)。

 オリジナル主題歌「魔法をかけてあげる」はポップかつキュンとするメロディーと、アッパーなテクノサウンドがマッチした名曲。サビの歌詞は、戦うたびに友だちの記憶を消さなければいけないマリーちゃんの決めゼリフとシンクロしている。

 ちなみに歌唱している「ぐらむ」の素性がわからないので、知っている読者がいたら教えてほしい。

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