プリンス・ハイネルにシャーキン、大将軍ガルーダも…昭和ロボアニメを彩った「美形悪役キャラ」の悲しきドラマと「声優・市川治」の名演技の画像
DVD「超電磁マシーン ボルテスV VOL.4」(TOEI COMPANY,LTD.)

 2024年10月18日に公開された実写映画『ボルテスV レガシー』は、昭和のロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』(1977年より放映)をフィリピンで実写リメイクした作品だ。

 その映画『レガシー』で「プリンス・ザルドス(※原作アニメではプリンス・ハイネル)」の日本語吹き替えを担当したのが、人気声優の諏訪部順一さんだ。これまで諏訪部さんは『テニスの王子様』の跡部景吾役や『うたの☆プリンスさまっ♪』の神宮寺レン役など、数多くの美形キャラを演じてきたが、今回の配役が決まったのは「プリンス・ハイネルの日本語吹替やりたい」と自身のSNSに投稿したのがきっかけだという。

 映画の『レガシー』でザルドスを演じた俳優のイケメンぶりからも分かる通り、原作アニメのプリンス・ハイネルはプリンスの名に恥じない“美形キャラ”である。

 実は『ボルテスV』のプリンス・ハイネルをはじめ、「長浜ロマンロボシリーズ」の三部作すべてで、いわゆる「美形悪役」キャラの声を担当していたのは声優の市川治さんだった。

 そこで今回は、そんな市川さんが演じた昭和のロボットアニメを代表する「美形悪役」たちを振り返ってみたい。

■傲慢な美形に秘められた真実とは…!? 「大将軍ガルーダ」

 長浜ロマンロボシリーズの第1作目となる『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年より放映)は、キャラクターデザインを『機動戦士ガンダム』(1979年)の安彦良和さんが担当し、全54話が放送された。

 地底で長き眠りについていたキャンベル星人が地球侵攻を開始し、それに対抗するため、葵豹馬ら5人の若者が電磁力で合体する巨大ロボ「コン・バトラーV」に搭乗して戦うというストーリー。

 本作に登場する美形悪役が、キャンベル星の前線司令官である「大将軍ガルーダ」だ。青白い肌に猫っ毛っぽい金髪ボブカット、額には特徴的な赤い装飾をつけ、古代ギリシャ風の衣装をまとっている。

 その整ったマスクは魅力的だったが、その下には大きなくちばしと羽根を持つ“鳥人”の姿が隠されていた。

 母である女帝オレアナをひたすら敬愛する“マザコン気質”な反面、地球人を虫けら同然に考え、自分を慕うハーフロイド(下半身のないアンドロイド)のミーアを「壁飾り」と見下す傲慢な性格。よく言えば、どこまでも純粋で子どもっぽいガルーダは、市川さんが演じた美形悪役キャラのなかでも幼いイメージがある。

 ところが、第25話「大将軍ガルーダの悲劇」で彼のアイデンティティが崩れ去る。ガルーダを守るため、コン・バトラーVに体当たりしたミーアは瀕死の状態に。ガルーダは彼女を修理するため工場エリアに向かうが、そこには自分と同じ顔をした“失敗作”のロボットが何体も並んでいた。

 実はガルーダも「ロボット(アンドロイド)」であり、偽の記憶を植えつけられてオレアナに利用されていたのである。

「ミーアよ、笑ってくれ。私もお前と同じロボット……母上の操り人形だったのだ……」。ロボットでありながら涙を流し、自嘲した市川さんの演技は、まさに“ガルーダの心の底からの叫び”だと感じられた。 

 敬愛していたオレアナを始末したガルーダは、コン・バトラーVに戦いを挑んで敗北。ミーアの亡骸を抱きあげ、崩壊する火山島のなかに消えていく。

「ミーア、もう決してお前を離すまい……決して」。最期の時を迎えて、ようやくミーアの想いが彼に届いた瞬間である。コン・バトラーVに対して戦いの礼を告げた時は王子らしく、ミーアにはやさしく語りかける市川さんの緩急の演技はかなり切ない。個人的には長浜ロマンロボアニメ三部作で一番の悲劇であり、悲恋に感動させられた。

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