漫画でよく見られる展開に「実力はたいしたことないのに、勘違いや偶然で出世する」というものがある。分不相応にのし上がるキャラが焦りまくるコミカルさが楽しく、古今東西さまざまな漫画が歩んできた“愉快な王道”とも言えるだろう。
尾田栄一郎氏が描く大人気漫画『ONE PIECE』でも、海賊バギーがその王道をひた走っている。バギー自身は弱小海賊なのだが、運命のいたずらでドンドンのし上がり、いまや世界最強の海賊“四皇”の一角に君臨してしまった。
今回は、そんなバギーが成り上がるに至った実績とその内情を覗いてみよう。
■のちの四皇“麦わらのルフィ”が死を受け入れた! ローグタウンでのハデ死刑騒動
まずは、東の海(イーストブルー)最後の町「ローグタウン」で巻き起こった“ハデ死刑騒動”だ。本作の主人公モンキー・D・ルフィに倒された恨みを持つバギーは、復讐のためローグタウンで待ち伏せを計画する。
そしてルフィが海賊王ゴールド・ロジャーの処刑台に登った隙を見計らい、ギロチンで拘束。サーベルで首を落とす「ハデ死刑」を仕掛けた。
ハデ死刑自体は偶然の落雷によって阻止されたが、このときのルフィは仲間に「わりい おれ死んだ」と伝えるほど、死を受け入れていた。王下七武海や旧四皇カイドウら大海賊との戦闘でも決して諦めなかったルフィの言葉だと考えると、その意味は重い。ルフィに一度は諦めさせた男、それがバギーなのだ。
当時はルーキーのルフィも、いまは四皇として世界に名を轟かせる大海賊である。「のちの四皇を公開処刑しようとした」といえば、事情を知らない人々にとっては恐るべきエピソードに見えるだろう。実際は単なる逆恨みなのだが……。
■伝説を生きる男? 海賊王の元クルーにして四皇“赤髪のシャンクス”の兄弟分
出世では本人の実力以上に人脈がポイントになることがある。「虎の威を借る狐」なんて言葉もあるように、大物と繋がっている人はそれだけですごそうに見えるものだ。
その点、バギーの人脈は凄まじい。見習い時代はゴールド・ロジャーの船に見習いとして乗りこんでおり、ロジャーや“冥王”シルバーズ・レイリー、現四皇“赤髪”のシャンクスとともに冒険をしている。とくにシャンクスとは「兄弟分」と呼べる関係で、偶然顔を合わせたときはシャンクスが嬉しそうに挨拶していたほどだ。
さらに、ロジャーとよく戦っていた“白ひげ”エドワード・ニューゲートには「マリンフォード頂上戦争編」で「俺の首を取る前に一緒に海軍を潰さないか?」と、誘われたりもしている。
ロジャー、白ひげ、シャンクスといった新旧最強の大海賊たちと深い関係を持つバギーは「伝説を生きる男」とも呼ばれ、配下から厚い信頼を寄せられているのだ。
繰り返しになるが、バギーはちっとも強くない。ロジャーの船にいたのは戦闘力を買われたわけではなく、白ひげが共闘を持ちかけたのもバギーがその場の勢いで連れてきた「インペルダウン」の脱獄囚たちが戦力になると見込んだからだ。
それでも本人が評価されつづけるバギーの人生こそ、伝説級に奇想天外ではないだろうか?