輸入雑貨の貿易商を営む井之頭五郎が主人公のテレビドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)。松重豊さん演じる五郎の食事風景を見せ続ける本作は、2012年の放送開始から10シーズン以上放送され、2025年1月には映画化が決定している。
本作が支持を集める理由は、なんといっても五郎の食べっぷりだろう。彼の食事にはある種の美学すら感じ取れ、「あんな風にご飯を食べたい」と憧れる男性は数知れない。今回は、多くの視聴者を惹きつけてやまない井之頭五郎の「メシの流儀」を追いかけていく。
■「ヘルシー志向がなんだ!」食べすぎだろうと食べたいなら頼んでしまう豪快さ
五郎の食事は「腹が減った」から始まる。空腹に耐えながら懸命に探した店で食べるからか、その量は一般人からするとかなり多い。
ご飯とおかずのセットメニューで終わらず気になる単品を追加するのは当たり前、ときには「金目の煮付け定食」と「刺身盛合せ定食」を同時に頼む2人前食いをするほどだ。食べ盛りの男子高校生だってなかなかそこまで食べないぞ……!
五郎は働き盛りの中年男性だ。健康のために食べる量を減らす人も多い年代だが、五郎は気にせず、自分が食べたいように食べまくる。シーズン9の第1話では、ひれかつ御膳やエビフライをガッツリ食べながら、「ヘルシー志向がなんだ」「こうして揚げ物をもりもり食べられることが、俺の健康の証」と語っている。
飯を食う時はなにより食欲を優先する姿勢こそが健康的なのだ——そう語る五郎の食事はとても魅力的であり、それぞれの事情で思うように食べられない現代人には眩しく映るのかもしれない。
そんな五郎が食べ終わったあとに「さすがに食い過ぎた」と、反省するのもご愛敬だ。
■足で店を探し、店員におすすめを聞く…アナログなメニュー選びが渋い
今はスマホで飲食店のメニューや評判を調べられるようになり、食べるお店をあらかじめネットで吟味するのが当たり前になっている。そんな現代において、自らの足と直感で食べたいものを見つけるのが五郎の流儀だ。
五郎は商談で各地を飛び回っており、事務所のある東京都内だけでなく地方、ときには韓国や台湾にも足を延ばす。そのため、食事処を探すときには、自分の直感を信じて未知のお店に飛びこむのが基本である。
初めてのお店なので右も左もわからず、最初の数分間はメニューを眺めたり店内を観察したりしながら、「俺はいま何を食べたいのか」を自問自答していく五郎。
自分で決めきれなかったら店員におすすめを聞き、教えてもらったメニューはほぼ確実に頼む。さらに、ほかの客が食べているものが羨ましくなって「あれ、ください」と衝動的に頼んでしまうこともしばしばだ。
そして、試行錯誤を経て出会えた料理が旨ければ「正解だ!」と、心の中でガッツポーズ。未知との出会いと喜びが、五郎式メニュー選びには詰まっている。