あなたは漫画やアニメを楽しんでいて「小さい頃はよくわからなかったセリフが、大人になって理解できた」と感じたことはあるだろうか? 筆者はたびたび経験するのだが、とくにハッとしやすいのが「お酒にまつわるセリフ」だ。
子どもの頃はお酒をなんで飲むのかも理解できなかったのだから、ピンと来ないのも無理はない。だが、お酒を飲む理由を知った今こそ、彼らが語るセリフが五臓六腑に染みるのだ。
今回は、大人になった今こそ聞きたい、「お酒好きキャラの名言」を紹介しよう。
■『銀河英雄伝説』ヤン・ウェンリー「酒は人類の友だぞ」
最初は名作SFアニメ『銀河英雄伝説』の主人公のひとり、ヤン・ウェンリーのセリフだ。
戦場で指揮をとらせれば一度たりとも負けることはなかった英雄・ヤンだが、私生活では紅茶と酒をこよなく愛する変人だった。度を超えた飲酒量で周りから呆れられることもしばしばだ。
『銀河英雄伝説 本伝』第39話では、部下のユリアンから「健康に良くないからお酒は自重してください」と、たしなめられるシーンがある。まったくの正論だが、ヤンは事もなげにこう言い返す。
「酒は人類の友だぞ 友人を見捨てられるか」と。
これぞ、“酒好きの理屈”と言いたくなる清々しい主張だ。しかし、考えてみればお酒は正しく飲めば気持ち良く酔えてなんだか楽しくなる。一緒にいて楽しいなら、確かにそれは友といえるのではなかろうか。
このシーンではヤンがさらに「人類は5000年前から酒を飲んでいた」と、自分の主張を補強する。いいように言いくるめられている気もするが、ヤンにかかれば人類と酒は何千年と苦楽を共にした友のように思えてくる。不思議だ。
■『るろうに剣心』比古清十郎「春は夜桜 夏には星 秋には満月 冬には雪 それで十分酒は美味い」
次は、TVアニメ放送で盛り上がりを見せる『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』(和月伸宏さん)から、最強の師匠キャラ・比古清十郎の渋すぎる名言を見てみよう。
幕末の京都で人斬りとして徐々に心を摩耗させていく緋村剣心は、酒を飲みながら師匠の言葉を追想する。
「春は夜桜 夏には星 秋に満月 冬には雪」「それで十分酒は美味い」
自然の美しさを肴にお酒を飲むとは、現代人からすればなんと贅沢なひと時だろうか。間違いなくうまい。だが、このセリフは続きのほうが大事かもしれない。
「それでも不味いんなら それは自分自身の何かが病んでいる証だ」
体調が悪いときや気分が落ち込んでいるときのお酒は不味い、とはよく聞く話だ。実際、師匠の教えを思いだしていた剣心も「最近は何を飲んでも血の味しかしない」と、自分の状態を危惧している。
お酒は自分の心身を映す鏡でもあるかもしれない……そう思わせる名言だ。