『スラムダンク』牧紳一vs仙道彰や『はじめの一歩』ブライアン・ホークvs鷹村守も…スポーツ漫画のアツすぎた「主人公不在の名勝負」の画像
『THE FIRST SLAM DUNK』(C)I.T.PLANNING,INC.(C)2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

 スポーツ漫画では、主人公不在で名キャラクター同士のバトルが描かれる事も少なくない。それぞれに個性豊かなライバルたちが全力でぶつかり合う姿には、主人公が絡んでいなくとも思わず胸が熱くなってしまうものだ。

 今回はそんな名作スポーツ漫画のアツすぎた「主人公不在の名勝負」を紹介していこう。

■高度な戦いに大興奮!『SLAM DUNK』牧紳一vs仙道彰

 国内外で高い知名度を誇るバスケ漫画『SLAM DUNK』。本作は主人公の桜木花道はもちろん、流川楓、三井寿、赤木剛憲、宮城リョータといった漫画史に残る名キャラクターを数多く生み出している。

 本作で主人公不在の名勝負と言えば、神奈川屈指の天才プレイヤー・仙道彰と神奈川No.1プレイヤー・牧紳一の戦いだろう。インターハイをかけた決勝リーグ「陵南vs海南大附属」での二人の激突は、見逃せない展開の連続である。

 仙道と牧はともに全国屈指のプレイヤーであり、牧は3年生、仙道は2年生と学年は違うものの実力は拮抗している。この神奈川最強プレイヤー決定戦は、始まる前からすでに名勝負を期待せずにはいられなかった。

 自由な発想と圧倒的なバスケセンスを見せる仙道と、昨年全国ベスト4の経験値と安定したメンタリティーを持つ牧。二人の超高校級ともいえる一進一退の攻防に、もう一人の神奈川No.1プレイヤー候補である翔陽エース・藤真健司は「オレのいないとこでNo.1争いをするなよな」と嫉妬するほどだった。

 この試合が名勝負と言われるのは、試合終了数秒前の一瞬の出来事が大きい。陵南が2点差をつけられた場面で、仙道がボールを持った。残り時間数秒という中で、牧は仙道に追いついたのだ。そこで牧は「おかしい」と違和感に気付く。

 そして、牧はシュートを放つ仙道にあえて触れず、同点ゴールを決めさせた。結果的にこの判断が勝敗を分けることになる。

 実は仙道は一瞬の判断で、2ポイントシュートに加え、牧のファウルによるフリースロー1点で、逆転しようと考えていた。それを見抜き、あえて延長戦に持ち込む選択をするというハイレベルな心理戦は、牧の優秀さが際立つ名シーンだ。

「決着をつけたかった仙道」と「延長戦を選ぶ牧」という対比は、作中でも最高峰の頭脳戦とバスケセンスのぶつかり合いだったと言えるだろう。どっちが神奈川No.1プレイヤーだったのか考えるだけでも楽しくなってしまう名勝負だ。

■ヒリつく展開から目が離せなかった『テニスの王子様』手塚国光vs跡部敬吾

 日本にテニスブームを到来させた『テニスの王子様』。数多くのイケメンが登場し、各キャラクターに女性ファンがいるほどの魅力的なキャラの宝庫だ。その中でも主人公・越前リョーマに勝るとも劣らない人気の跡部景吾と、リョーマに大きな影響を与えた人物でもある青学テニス部部長の手塚国光の一戦は、絶対に見逃せない大迫力の戦いだった。

 二人の試合は関東大会1回戦のS1で、青学にとって2勝1敗1無効試合という重要な局面で部長同士の戦いが描かれた。二人はともに全国区の実力者であるが、跡部は怪我明けの手塚では勝てない可能性があるほどの強敵だった。

 試合では、序盤から跡部がドライブボレーやジャックナイフを披露し、そのテニスセンスの高さを見せつける。しかし、手塚の強さは圧倒的な技術力と驚異的な精神力だ。彼はどんな揺さぶりにも動じない正確無比なショットに加え、ボールを自分に引き寄せる「手塚ゾーン」で跡部に見事対応していく。

 しかしそんな中、跡部は「眼力(インサイト)」で手塚がヒジに爆弾を抱えていると見抜いた。手塚の故障を狙い、超持久戦を選択する跡部。それでも手塚の優位は動かず、彼のサービスでマッチポイントを迎える。あと一球で勝負が決まる手に汗握る瞬間だ。

「あと一球」――手塚はそう思いながら最後の一球を高く上げた。その時、ついに手塚の肩は限界を迎え、その場にかがみこんでしまうのだった。それまで最強の部長だった手塚が負けるかもしれないと不安を感じる切迫した状況だ。

 しかし、試合続行不能な程の肩の痛みを感じているはずの手塚は、それでも試合を続けることを望む。この時、コートに向かう手塚にリョーマが「俺に勝っといて負けんな」と彼らしいエールを送る姿も印象的だった。

 結果的にタイブレークに突入し、勝負を制したのは跡部だった。最強のプレイヤーだった手塚が作中で初めて敗北する衝撃的な展開は、どこか喪失感を覚えてしまう。

 しかし、手塚の実力と全国への想いの強さ、そしてそれに敬意をしめし全力で応えた跡部の泥臭い姿も、いつまでも記憶に残ることとなった。

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