■ほぼ後半の出場だけで全出場選手中の最多得点を稼いだ「沢北栄治」

 勝ったチームからMVPを選ぶのが一般的であるが、負けた山王工業からMVPを出したくなるほどに、やはり高校No.1プレイヤーである沢北栄治のプレイは群を抜いていた。

 山王工業78点中、作中描写があったのが57点。その内、沢北の得点は26点だ。描写がなかった得点を考えると、おそらく沢北は確実に30点を軽く超えているだろう。これは三井を超える全選手最多得点である。

 さらに驚くべきことに、沢北は前半早々交代しているため、ほぼ後半だけでこの得点を挙げていることになる。“たられば”は良くないが、もしも沢北がフル出場していたら湘北は果たしてこの試合山王に勝てていたのだろうか……。

 さらに沢北は、湘北のエースである流川を抑え込んだのも大きい。1on1で流川を圧倒、自らは得点し続け、流川の得点を最小限に抑えた。途中から、流川は周りを活かすようなパスを使って対応してくるものの、単純な1on1では最後まで沢北に分があったように思う。

 また、山王が最後の勝負で使ったのもやはり沢北だった。試合終了まで24秒のところで湘北に逆転を許した山王。ゲームメーカーの深津一成は持ち時間を目一杯使い、ラストプレイに勝負をかけ、そして沢北へとパスを送った。流川と赤木2人がシュートブロックで飛ぶなか、沢北は見事に再逆転のシュートを決める。

 最終的には再々逆転を許して山王は敗れたのだが、沢北も十分MVP候補と言っていいだろう。

 

 今回は『SLAM DUNK』屈指の名試合、湘北VS山王工業のMVP候補を考察してみた。

 三井は勝負強い3Pで得点し続け、湘北最多の25得点を稼いだ。また、桜木はリバウンド10本と14得点の「ダブルダブル」を達成、ラストのブザービーターでのシュートで勝利を決定づけた。一方、敗れた山王の沢北も高校No.1の呼び声に相応しい圧倒的な存在感を見せつけた。

 公式でのMVPは発表されていないため、まだまだ議論の余地があるこの山王戦。あなたはどの選手がMVPとしてふさわしいと思うだろうか。

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