1989年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載がはじまり、今年で35周年を迎える『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)。
主人公・勇者ダイの親友で、最大の理解者なのがポップだ。序盤、ポップは仲間に劣等感を覚え、怖かったらすぐに逃げ出し、弱そうな敵には強気に出るというどうしようもないヘタレキャラだった。しかし、冒険を重ねてたくましく成長した彼は、大魔王バーンとの対決でもダイとともに最後まで戦い抜いた。
さて、そんなポップだが、ほとんどの敵にまでザコ扱いされナメられていた。それでもダイがラストバトルで言った「お前は昔から天才だよ」のように、彼の才能に早くから気づいた者たちがいる。振り返ってみよう。
■アバンとマトリフに認められて育てられた唯一の存在
ランカークス村で両親と暮らしていたポップは、たまたま立ち寄った勇者・アバンに憧れて家を飛び出してしまう。当初、ポップの両親はアバンのことを恨んでいたようだったが、そもそも人格者であるアバンが大事な子どもを預かる際、断りもなく連れて行くことはないだろう。ポップが勢いで同行したことがうかがえる。
さて、少年時代のポップは勇者育成業の家庭教師であるアバンに弟子入りし、1年以上修行を積む。彼の持つセンスにアバンも光るものを見出したのだろう。なにせメラゾーマを使えるほどである。ゲームなら一撃必殺の強力な攻撃呪文で、ほとんどのザコキャラを瞬殺できるくらいのものだ。
その後、ポップは大魔道士マトリフに師事する。マトリフは甘えた性格のポップをさらに厳しく指導し、基礎から叩き込んでいった。
マトリフは賢者といえるほどの魔法の使い手だが、ポップにも同じようにほとんどの呪文を契約させていた。賢者であるパプニカ王女・レオナは、かつてダイに“呪文の契約ができたなら才能のある証拠”と言っていたが、このことからもマトリフはポップの隠れた才能を見出していたと思われる。
あらためて考えてみると、アバンとマトリフという人知を超えた存在に指導してもらったのだから、そりゃポップは強くなるはずだな。
■魔王軍から改心したのはポップのおかげ? 覚醒のきっかけとなった獣王クロコダイン
上述したように、当初、ポップは魔軍司令ハドラーや、同じアバンの使徒である魔王軍軍団長のヒュンケルにすらザコ扱いされていた。そんななか獣王クロコダインは、ある意味魔王軍でポップを最初に認めたキャラクターといえるだろう。
とはいえ、もちろんクロコダインも最初はポップを格下扱いしており、視野にも入れていなかった。しかし、大きな戦力差があるにもかかわらず、勇気を振り絞って単身立ち向かってくる彼の姿に心を打たれたのだ。
この戦いは両者を覚醒させるきっかけとなる。ポップも以降は強敵相手でも逃げなくなった。
その後、クロコダインは竜騎将バランとの戦いでは魔王軍を裏切り、ダイたちに加勢することとなる。だが、バランを相手に目を塞がれ、右腕にも致命傷を与えられてしまった。
降伏しろというバランに対し、それでも立ち上がるクロコダイン。両目が見えないクロコダインを心配するポップだったが、クロコダインはかつて自分との戦いでぬぐってくれた心の目があると語る。
たとえ絶対に勝てない相手だったとしても仲間のために命をかけ戦う人間の気持ちに、クロコダインは素晴らしさを見出したのだ。彼の心の濁った汚れを取り除いたのは、もちろんポップである。
ダイとポップを“相棒”と言うなれば、ポップとクロコダインは“パートナー”のような関係で、その様子も本作の見どころだったと言えるだろう。