■世界を恐怖のどん底に陥れるが、実は支配自体に興味がないセル
ドクター・ゲロが作り出した人造人間たちが暴れまわった「人造人間・セル編」。ラスボスであるセルの目的は、自分自身が“完全体”として進化し究極の力を手にすることであり、この世を支配することにはさほど興味がなかった。
ピッコロ大魔王やフリーザの場合、自身の強さはあくまで手段に過ぎず、最終的な目的は世界や宇宙の支配だった。一方、セルは手段と目的が逆だ。戦闘民族サイヤ人の細胞がそうさせているのだろうか。自身が強くなることこそが目的であり、人間を襲ったのも自分が強くなるための手段や行程に過ぎないのだ。
セルゲームを開催し世界中の人々に宣戦布告をしたのも、世界の支配がしたかったのではなく、自分自身が究極の存在であることを証明するためのものだったように感じる。
実際、悟空から接触を受け「試合にはかならず出てやる だからそれまではもうだれひとり殺すんじゃねえぞ」と言われるとニヤリと笑い、それ以降、セルゲーム会場で大人しく待ち続ける姿があった(先に手を出してきた軍隊には容赦なかったが……)。
圧倒的な力で結果的に世界を恐怖に陥れたものの、セルはただ、自己実現に熱心で世界の支配自体にはあまり興味がなかったようだ。
今回は、『ドラゴンボール』に登場する3人の悪の支配者たちの支配方針を比較してみた。ピッコロ大魔王は恐怖と破壊による支配を目指し、フリーザは経済と軍事を駆使して宇宙を統治、セルは自身の完全体への進化を最優先にしていた。世界を恐怖に陥れたという事実は同じでも、それぞれがまったく違う目的を持ち行動していたのが印象的だ。
ラスボスを筆頭に敵キャラ1人1人にも個性がある。それも『ドラゴンボール』が最高に面白かった理由の一つではないだろうか。