ピッコロ大魔王にフリーザ、セルも…『ドラゴンボール』「悪の支配者たちが打ち出した支配方針」を比較してみたの画像
『DRAGON BALL』#20 [DVD] ©バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 『ドラゴンボール』(鳥山明さん)には、シリーズごとに強力なラスボスが登場する。とくに読者にとっても印象的だったのが、ピッコロ大魔王、フリーザ、セルの3人だろう。悪の支配者として名を轟かせる彼らだが、それぞれが独自の目的と方法で世界や宇宙を支配しようと企てるのが面白い。

 この記事では『ドラゴンボール』悪の支配者3人を比較し、彼らの支配方針の違いについて詳しく見ていく。

■警察廃止、なんでも自由でOKのピッコロ大魔王

 天下一武道会直後、クリリンが殺されるというショッキングな展開から始まった「ピッコロ大魔王編」。そのラスボス・ピッコロ大魔王の支配方針は、自らが悪の象徴として君臨し、犯罪行為のすべてを許可するものだった。

 ドラゴンボールで若返りを果たしたピッコロ大魔王が真っ先に向かったのが、“世界の王”が住むキング キャッスル。圧倒的な力ですぐにそこを占拠すると、テレビ中継を使い、新たな国王として世界の前に現れる。

 中継では、まず「キライなコトバは“正義”と“平和”だ」と述べ、「警察は廃止、戦争、暴力、強盗、殺人…なんでも自由」と宣言。さらに「正義をふりかざす者は わが魔族が ことごとく退治してやる!」とまで言っている。

 ピッコロ大魔王は神様が分離させた悪の心の化身だ。それゆえに、心の底から“正義”を嫌っていることが分かる。ちなみに、唯一この方針に興味を持ったのがランチで「けっこういいこというじゃねえか…」と、感心していた。

 ピッコロ大魔王の支配方針は、自身が王として君臨し、“自由”という名の恐怖と破壊による無秩序な世界を作ることだった。

■理想の上司? 自身の軍を運営して惑星侵略に勤しむフリーザ

 ピッコロ大魔王の故郷・ナメック星で展開された「フリーザ編」。ラスボス・フリーザの支配方針は、自らの軍を使っての経済的・政治的な征服だった。

 数多くの惑星を次々に侵略し、占領・破壊・殺戮を繰り返す宇宙規模の侵略者であるフリーザ。自身は宇宙一ともされる圧倒的な力を持ちつつも、自らの軍を作り、組織的かつ効率的な方法で銀河を支配しようとする。しばしばフリーザが“理想の上司”と紹介されるのも、そこに理由があるようだ。

 作中では実際、フリーザが自ら動けばすぐ解決できるようなことであっても、ザーボン、ドドリアなどに指示を出し、積極的に部下たちを動かす姿がたびたび見受けられる。さらにドラゴンボールを集めてきたギニューなど、成果をあげた部下に対してフリーザは賛辞の言葉を忘れない。また、末端の兵士たちが割と生き生きと働いていたことからも、フリーザは組織運営に長けていることが伺える。

 フリーザも暴力や恐怖を使っているが、ピッコロ大魔王のような無秩序な世界が欲しいわけではない。フリーザの目的はあくまで利益と権力の拡大であり、そのための支配だったといえるだろう。

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