『ガラスの仮面』に『イグアナの娘』、『白鳥麗子でございます!』も! 90年代「少女漫画ドラマ」で人気女優が魅せた「キャラ憑依」演技の画像
安達祐実  写真/ふたまん+編集部

 現在放送されているドラマは、人気漫画を実写化したものも多い。その流れの始まりとなったのは、多くの名作漫画が生まれた90年代だったように思う。

 90年代はメイクや映像技術が徐々に向上してきた時代であり、それまで実写化は難しいと言われてきた漫画作品が多く実写化された。今回は、90年代に話題となった「少女漫画を実写化したドラマ」を振り返ってみよう。

■月影先生はまるで漫画の生き写し『ガラスの仮面』

 『ガラスの仮面』は、1997年7月からテレビ朝日系列で放送されたドラマである。原作は、1975年から『花とゆめ』(白泉社)にて連載が開始された美内すずえさんによる同名の少女漫画だ。

 貧しい家庭環境ながらも演劇に情熱を注ぐ少女・北島マヤが、伝説の大女優・月影千草に才能を見出され、演劇の世界で成長していく姿を描いた本作。マヤを影から支える“紫のバラの人”こと大企業の社長・速水真澄や、マヤの永遠のライバル・姫川亜弓との競い合いを中心に、厳しい環境で奮闘する彼女の成長が見どころだ。

 原作は“スポ根少女漫画”とも呼ばれ、マヤの演劇にかける熱い情熱が特徴的だ。だがドラマ版も、そのエネルギーに負けずに熱い内容となっている。

 主人公・北島マヤを演じたのは、当時“天才子役”として注目を集めていた安達祐実さんだ。ライバルの姫川亜弓を松本莉緒(当時:松本恵)さん、速水真澄を田辺誠一さんが演じるなど、豪華キャストが揃った。

 なかでも注目を集めたのは、月影千草役を演じた野際陽子さんだろう。漫画で千草は顔半分に傷を負った姿で登場するが、ドラマでもそのビジュアルを見事に再現。長い髪で顔の半分を隠し、鋭い眼差しでマヤを指導する野際さんはまさに漫画キャラそのもので、暗いトーンで憂いを帯びた美しい声も原作の人物像にぴったりであったように思う。

 また、このドラマでは、漫画に登場した名シーンも高い再現度で登場している。

 たとえば、原作では舞台「若草物語」のベス役を勝ち取るため、日常生活すべてにおいてベスになりきるマヤの姿が描かれているのだが、ドラマで安達さんはまるでベスが乗り移ったかのような演技をしていた。それはまるで漫画のマヤが現実に現れたかのようで、印象的だったことを覚えている。

 人気を博したこのドラマは翌年に続編が制作され、シリーズを通してB’zの『Calling』という楽曲が主題歌として使用された。力強いギターサウンドとかすれたシャウトを響かせる稲葉浩志さんの歌唱が、熱いドラマの内容に非常にマッチしていたのを覚えている。

■奇抜な設定を見事に実写化! 『イグアナの娘』

 ドラマ『イグアナの娘』は、1996年4月からテレビ朝日系列で放送された作品である。原作は1992年に『プチフラワー』(小学館)にて掲載された、萩尾望都さんの短編漫画だ。

 物語のあらすじはこうだ。川島なお美さんが演じる青島ゆりこは、長女・リカ(菅野美穂さん)の姿がイグアナにしか見えず、どうしても愛することができない。その一方で、次女のまみ(榎本加奈子さん)のことは溺愛している。

 やがてリカも母親が自分をイグアナだと思っていることに気づき、自身をイグアナとして認識するようになってしまう。本作はこうした母との愛憎の葛藤を抱えながら、リカが成長していく姿を描いた物語だ。

 筆者は当時このドラマのタイトルを聞いたとき、なんとも信じがたい設定に驚いた。番組を宣伝するCMでは、菅野さんが鏡を見るとそこに映るのはゴツゴツしたイグアナ……となんとも奇妙で、最初は「ギャグドラマなのか?」と首をかしげた記憶がある。

 このような奇抜な設定とは裏腹に、本作は物語が進むにつれて視聴者の関心を集めていき、視聴率も次第に上昇。大きな話題となった。

 このドラマはリカがただ母親に愛されたいという純粋な願いを抱きながら、孤独と葛藤のなかで自分を模索していくストーリーだ。このテーマは現代社会においても共感を呼ぶものであり、今見てもきっと深い意味をもたらしてくれるように思う。奇抜な設定というだけでなく、そのストーリー性も含め多くの人の心に残った名作である。

  1. 1
  2. 2
  3. 3