■若くなってもその“変人”っぷりは健在…『亜人』綾野剛
実写化作品では、キャラクターの年齢に変更が加わるケースも少なくはない。
桜井画門さんの人気漫画を原作とした2017年に公開された映画『亜人』。死ぬことのない特異体質を持つ新たな人種・“亜人”をテーマに、望まぬ力を手にしてしまった主人公の戦いや苦悩、葛藤を描いた作品だ。
そんな本作でもとある人気悪役キャラの年齢が変更され、話題を呼んだ。それが、綾野剛さんが演じた主人公・永井圭に立ちはだかる最大の敵・佐藤だ。
原作漫画では常に穏やかな表情を浮かべた初老男性として登場する佐藤だが、実写版ではトレードマークのハンチング帽はそのままに、より若々しく、30代ぐらいの見た目の人物に設定変更されている。
一方で彼ならではの“変人”っぷりは映画でも健在。戦いの場に身を置きながら、どこか嬉々としてその場の空気を楽しみ、笑いながら「永井くぅ〜ん」と独特のイントネーションで主人公の名を呼ぶ姿は、観る者に強烈なインパクトを与えた。
また、佐藤を演じるにあたり綾野さんは徹底的な肉体改造にも取り組んでおり、不意に見せるその肉体美も本作の大きな見どころの一つとなっている。
■禿げた中年男性がまさかのイケメン化? 『ザ・ファブル』向井理
原作漫画のキャラクターが映画版ではより若々しく、思いがけないイケメンに……というパターンも、実写化ならではだろう。
2019年に公開された『ザ・ファブル』で、そんな姿を披露したのが向井理さんだ。
本作は南勝久さんのアクション・コメディ作品を原作としており、素性を隠し一般人として暮らしていく“伝説の殺し屋”の姿が描かれている。闇社会の住人たちが登場する本作において、向井さんは原作から思い切った路線変更が施されたキャラ・砂川を演じた。
砂川はファブルをつけ狙う“真黒組”の幹部として登場する敵役の一人。原作漫画では左目に傷を持つ少し剥げかかった頭の中年男性だったが、映画版では向井さんの若々しさとそのイケメンっぷりを活かした“インテリヤクザ”として登場。
左目の傷は健在だが、オールバックにまとめあげた髪の毛や細身の黒スーツ姿はカッコ良く、原作とは異なったスタイリッシュな立ち振る舞いが印象的だった。
一方、強烈な関西弁での言い回しや、仲間であろうとも容赦なく利用しようとする冷酷非道な姿は健在。妖しい魅力を兼ね備えた映画オリジナルの“砂川像”を確立していた。
実写作品におけるキャラクターの“再現度”はファンであればあるほど、期待を抱いてしまうものだ。だが、紹介してきたように、持ち前の演技力や独自の立ち振る舞いでオリジナルのキャラクター像を確立してしまった俳優も少なくはない。
決して“ミスキャスト”とは言い切れない彼らの怪演の数々を、ぜひご自身の目で確かめてみてほしい。