漫画やアニメを原作とする実写作品では、キャラクターの再現度が注目されるものだ。しかし二次元の存在を三次元で表現するのだから、なかなか一筋縄ではいかない。
そんななかビジュアルや設定を変更しつつも、俳優たちの演技により凄まじい説得力が生まれた作品も多数登場している。原作とは違った解釈で作られたキャラ設定でなお、ファンを納得させた俳優たちの名演技を見ていこう。
■“殺人鬼”の怖さを追求した“カメレオン俳優”…『ジョジョの奇妙な冒険』山田孝之
演じる役柄ごとにさまざまな顔を覗かせ、その演技の幅広さで観客を唸らせ続けているのが、山田孝之さんだ。あまりにも多種多様な役柄を演じることから“カメレオン俳優”とも呼ばれている彼だが、その独自の演技プランが思わぬ説得力を生んだ作品がある。
それが、2017年に公開された実写映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』だ。荒木飛呂彦さんの人気漫画を原作とした映画で、本作において山田さんは主人公らに立ちはだかる連続殺人犯、“アンジェロ”こと片桐安十郎を演じている。
ほかの俳優たちが原作漫画にかなり忠実なビジュアルを披露するなか、山田さん演じるアンジェロの見た目は渋い色のロングコートにダボッとしたズボンを着ていて、原作のビジュアルとはあまり似ていない。原作では、カットソーにオーバーオール着用、やや子どもっぽいキャップを被っているなどポップな服装だった。
作中での立ち振る舞いも、原作に比べるとかなりおとなしくなっているのだが、山田さんは「猟奇殺人をする人の気持ちはわからないですが、とにかく考えることですね」と語り、日々の生活のなかでさまざまな“殺し方”を考え、演技に活かしたことを明かしていた。
結果、山田さん演じるアンジェロは、どこかぎらついた危うさや凶暴さで観る者を圧倒。映画版独自の新たなキャラクター像を見出した、まさに“カメレオン俳優”ならではの名演といえるだろう。
■“二人一役”で演じる復讐鬼の鬼気迫る姿…『隣人13号』小栗旬、中村獅童
実写作品のなかには、原作が持つ奇抜な設定を思わぬ工夫や表現によって再現し、原作ファンを驚かせた作品も少なくはない。井上三太さんの漫画を原作とし、2005年に公開された『隣人13号』も、主人公が持つ特性を実に特殊なキャスティングで再現した一作である。
本作は過去に受けたいじめをきっかけに二重人格となった主人公・村崎十三が、かつてのいじめっ子に復讐を遂げるサスペンス作品。この物語の根幹を握る村崎役に起用されたのが、小栗旬さんだ。
原作では坊主頭になよなよした性格が目立っていた村崎だが、小栗さんが演じることでどこかイケメン度が増したビジュアルとなっている。そして驚くべきことに、本作で村崎の第2人格・“13号”を演じたのは中村獅童さんだ。なんとペアで演じることで、人格が移り変わったことを表現してみせたのだ。
まさかの“二人一役”で再現された村崎だが、同様の体を持つ別の人間という漫画ならではのインパクト大な設定を、見事に三次元のなかで再現。静かに怒りに燃える小栗さんの演技はもちろんのこと、殺意をあらわにし牙をむく中村さんの怪演によって、観る者を震え上がらせる“復讐者”を降臨させることに成功した。