トヨエツブームに大ヒット主題歌も…伝説の名作ドラマ『愛していると言ってくれ』が描いた「純愛」が今も心に残るワケの画像
常盤貴子  写真/ふたまん+編集部

 2024年7月から放送されているキリンビール『キリン一番搾り 糖質ゼロ』のCMでは、豊川悦司さんと常盤貴子さんが夫婦役として登場している。この2人を見て、懐かしい気持ちになった人は多いのではないだろうか。2人は1995年に大ヒットした恋愛ドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS系)で、恋人役を演じたことでも知られている。

 このドラマによって常盤さんはエランドール賞新人大賞を受賞、豊川さんは“トヨエツ”ブームを巻き起こすなど、『愛していると言ってくれ』は当時の社会現象にもなった。今回はそんな本作がどのようなドラマだったか、当時を思い出しながら振り返ってみたい。

■豊川悦司さんのセクシーな手がたまらない…トヨエツブームを巻き起こした作品

 冒頭でも紹介したように、『愛していると言ってくれ』で主人公のヒロイン・水野紘子を演じたのは常盤さん、そしてその相手役となる青年画家・榊晃次を演じたのは豊川さんだった。

 あらすじはこうだ。女優を志望し上京してきた紘子は、幼い頃に聴覚を失った画家の晃次と偶然出会い、親交を深めていく。偶然の出会いを重ねるうちにいつしかひかれ合う2人。しかし耳の聞こえない晃次との恋愛にはいくつもの壁があり……という内容だ。

 筆者も当時本作を見ていたが、まずなんといっても豊川さんが素敵だった。スラリと伸びた高身長にラフな白シャツをまとう姿……そして、紘子のことを真っすぐに見つめ、目と手話で一生懸命、愛情を表現する姿にキュンとした。

 そして、手話を繰り出す豊川さんの手はゴツゴツと大きく、温かく包んでくれるような安心感があった。近年では男性の手にドキッとする“手フェチ女性”なんていう言葉もあるが、まさにその先駆けと言えるだろう。

 本作を通して豊川さんはその後“トヨエツ”ブームを巻き起こし、当時同じく大人気だったキムタクこと木村拓哉さんのライバルのような存在としても注目された。

■障害があることは不便だけど悲劇ではない…みんなが手話について考えたドラマ

 本作では、健常者と障害を持つ人との関係について考えさせられる場面も多かった。たとえば、紘子と晃次が手話を通して楽しく話している電車のなかのシーンで、それを見ていた周りの人が冷ややかな視線を浴びせている描写があった。

 単純に手話で話す2人のことが気になって見てしまっただけかもしれない。しかし、そうしたなにげない行動が、実は障害のある人を苦しめてしまうのかも……と、当時考えたことを覚えている。このように本作は、障害を描いた作品として問題提起の意味も大きかったように思う。

 ただし、『愛していると言ってくれ』は、単に障害がある人との恋愛を悲劇的に描いたものではない。紘子は晃次のために手話を覚えつつ、お互いがコミュニケーションを図るため、積極的に手紙やFAXを利用しながら親交を深めていく様子などが丁寧に描かれている。

 聴こえないことは不便ではあるが悲劇ではない、だからこそ、想い合ってゆっくりと愛を深めることができる……。このドラマはそんなふうに、見ている人を優しい気持ちにさせてくれる作品だった。

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