漫画の実写作品でおこなわれるアクションシーンは、観ているだけでそのハードさがうかがえる。しかも、アクションがメインの作品ならそこだけに集中できるが、漫画原作ではそうはいかないパターンもある。
そのひとつがギャグ要素もアクション要素もふんだんに盛り込まれた作品である。ギャグをしっかりと演じつつ、アクションでも魅せなければならないとなると、かなり大変そうだ。
しかし、中にはその演じ分けを見事にこなす俳優もいる。ギャグもアクションも一切の妥協を許さず最後までやり通す……そんな姿勢には思わず脱帽してしまう。
そこで今回は、シュール系ギャグ漫画の実写化で本格的なアクションをこなした俳優を紹介していこう。
■危険なアクションも見事にこなした!『極主夫道 ザ・シネマ』玉木宏
まずは、2020年に実写ドラマ化され、2022年には劇場版として公開された『極主夫道 ザ・シネマ』の玉木宏さんから紹介していこう。
この作品は、おおのこうすけさんによる『極主夫道』(新潮社)を実写化したもので、アットホーム任侠コメディという類を見ないジャンルだ。
玉木さんは本作で、主人公であり「不死身の龍」と恐れられた伝説の極道・黒田龍を演じ、強面ながら家事に命を懸ける龍の純粋な気持ちを見事に演じていた。
いかつい元極道がバッチリ決めた服装の上にかわいいエプロンを身に着け、日々買い出しや料理をこなし、主婦に混ざって料理教室にまで通う……なんともシュールな日常が描かれる本作だが、演じる玉木さんが大真面目な表情を崩さないものだから、見ているこちらとは余計に笑えてしまう。
劇場版にはアクションシーンが多数取り入れられているのだが、玉木さんはできる限りスタントマンを使わずに自分で演じている。ワイヤーに吊られて宙を舞ったり、車にしがみついたりと、危険なアクションもこなしたというから驚きだ。そこまでやれたのは、玉木さんがこの映画のためにしっかりと身体を仕上げていたからだろう。
有酸素運動、ジムでの筋トレ、食事制限を行い、撮影時には体脂肪が脅威の4.7パーセントになっていたという。しかもそれだけではなく、忙しい合間を縫ってブラジリアン柔術の道場にも通っていた。そうした努力が活かされ、迫力のあるアクションシーンが完成したのだ。
2024年10月には、野田サトルさんによる『ゴールデンカムイ』(集英社)の実写化の続編が放送決定しているが、本作で鶴見中尉を演じる玉木さんを再び見ることができるのも楽しみだ。
■プロ意識の高さに脱帽…『HK/変態仮面』鈴木亮平
次はあんど慶周さんによる『究極!!変態仮面』(集英社)の実写版『HK/変態仮面』を見ていこう。本作で主人公の変態仮面こと色丞狂介を演じることになったのが鈴木亮平さんだ。
『HK/変態仮面』(以下、『変態仮面』)は2013年に公開された映画なので、鈴木さんの名前がまだそれほど世間に知られていない時期でもある。鈴木さんは友人である小栗旬さんの強い勧めによって、この役を演じることになった。
鈴木さんといえばプロ意識の高い俳優で、役になりきるために努力を惜しまないのは有名な話である。この『変態仮面』にも全力で向き合うために、体重を15キロ増やしてから脂肪を落としてみせ、筋肉トレーニングをしたりポージングの研究を繰り返した。
女性用の下着を身に着けて変身する……という設定の時点でとんでもない本作だが、鈴木さんはその「くだらなさ」に全身全霊で向き合うことで、突き抜けた演技を見せている。ほぼ全裸のビジュアルもかなり強烈だが、鈴木さんのまっすぐな演技によってよりシュールさが増しているような気がした。
また鈴木さんは、作中でのアクションシーンは自らすべてこなしたようだ。その理由は、別の人がやってしまうと肉体の違いで違和感が出てしまうからだという。変態仮面なので、ほぼ服を着ていないからより分かりやすくなってしまうのだろう。
アクションシーンも普通のアクションではなく、下ネタを取り入れたアクションになっておりかなりぶっ飛んでいる。それをひとりでこなさなくてはならなかった鈴木さんは、かなり練習を重ねたはずだ。
どんなことにも妥協を許さず、全力で演じる鈴木さんは別の意味で「変態」と呼ぶにふさわしい……のかもしれない。