■「次なんてない」が怖すぎ!『エグゼイド』永夢の非情さが光った39話
2016年から2017年にかけて放送された『仮面ライダーエグゼイド』は、医療とゲームを掛け合わせた斬新なテーマで話題を呼んだ作品だ。
第39話「Goodbye 俺!」では、主人公・宝生永夢が患者の命を救うためにバグスター・パラドと戦うのだが、その戦いぶりがすごい。ひと言でいうと「無慈悲」だ。
あらゆる攻撃を無効化する“ムテキゲーマー”に変身した永夢は、必死に抵抗するパラドを容赦なくねじ伏せる。普段は穏やかな永夢が、まるで手術で病巣を摘出するかのように淡々と敵を追い詰めるのがもう怖い。
あまりの実力差に勝ち目はないと悟り「次こそお前に勝つ」と言い残して去ろうとするパラド。追い詰められた敵が逃げるのは『エグゼイド』ではお決まりの展開だったため、“今回もそうだろう”と思って観ていたら、永夢がこう言ったのだ。
「次なんてない」
その言葉とともに、ムテキゲーマーがパラドの胸ぐらを掴んで逃亡を阻止。直後にトドメのキックを叩きこみ、パラドを消滅させるのだ。お約束を外された衝撃と、死の恐怖に怯えながら消えていくパラドの姿。筆者は大人になってから『エグゼイド』を見たのだが、子どもの頃ならトラウマになっていた……そう思わせるほどの回であった。
この回で印象的なのが、永夢を演じる飯島寛騎さんの名演だ。パラドをウイルスとしか見ていない冷たい目やセリフの言い方が真に迫っており、患者のためなら非情になれる永夢の一面を完璧に見せてくれた。飯島さんでなければ、このシーンはそこまで怖くなかったかもしれない。
石ノ森章太郎さんが生み出した初代仮面ライダーは、悪の秘密結社ショッカーに改造されており、怪人としての側面を持つ。もともと悪者と同じ力を持ちながらも、人々の自由のために戦うのが仮面ライダーである。
その系譜を受け継ぐ平成ライダーがカッコいいだけのヒーローでないのは、ある意味当然といえるだろう。「こっちのほうが悪いんじゃないか?」と思わせる苛烈な一面があるからこそ、単純な善悪で計れない深みが生まれるのだ。