■死してなお戦況を変えた岳雷

 最後は岳雷を紹介したい。岳雷は飛信隊結成当時からのメンバーではなく、元は麃公軍に所属していたが、麃公将軍の亡き後に飛信隊へ入隊することになる。

 岳雷は人格者と呼ぶに相応しい武将で、弓使いの仁・淡兄弟や我呂に大きな影響を与えた人物だ。

 秦軍が李牧率いる趙軍に取り囲まれると、飛信隊はそこからの突破を目指す。そんな中で飛信隊の前に現れたのが青歌軍だった。

 岳雷は我呂の忠告を無視して青歌軍の上和龍に突っ込むと、矛によって斬りつけられて倒れることに……。飛信隊は突破の機会を逃し絶体絶命のピンチとなる。

 しかしその窮地を救ったのが、仁・淡兄弟の弓矢だ。彼らのおかげで敵軍に隙が生まれ、羌瘣隊との挟み撃ちによって脱出するきっかけができたのだ。

 岳雷の死によって心に火がついた仁・淡兄弟が、意志を継ぐかのように飛信隊に貢献する姿には、胸が熱くなる。死してなお、多くの人間に影響を与えたのは麃公も同じなので、岳雷は彼から生き様を自然に学んだのかもしれない。

 真の武人は力だけではなく、普段の立ち振る舞いによって人の心を動かす存在だということを再認識した名場面だった。

 

 『キングダム』は常に死と隣り合わせの状況なので、信も仲間をたくさん失うことになってしまう。しかし、亡くなる者たちは皆、死んでも後悔はないといった潔さがある。

 そうした心構えでいられるのは、自分の願いや夢を仲間や信に繋げようとするからだろう。そんな彼らのアツいドラマから目が離せない。

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