「能ある鷹は爪を隠す」という有名なことわざがある。意味としては、本当に能力のあるものは、ふだんからそれをひけらかしたりせず、謙虚でいる様を表している。
実は『ガンダム』作品に登場するモビルスーツのなかにも、本当の姿や真の能力を隠し、敵を欺くための偽装が施された機体が存在した。
その正体を現したときには、敵だけでなく、多くの視聴者にも衝撃を与えた偽装機体を振り返っていこう。
※一部、映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のネタバレを含みます。
■友軍機と誤認させるための偽装計画
まずは、コミック『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』(角川書店)に収録されている「蝙蝠はソロモンにはばたく」というエピソードに登場した「ゲム・カモフ」という機体から。
「ゲム・カモフ(GM Camouf)」とは、ドイツ語読みしたジム+カモフラージュを省略した名称。ジオン公国軍が、地球連邦軍の量産機「ジム」に似せて開発した機体である。
いうまでもなく連邦に誤認させる目的で作られた偽装機であり、カラーリングも含めてかなりジムに寄せたフォルムを実現している。しかし、その偽装は完璧ではなく、よく見るとアイセンサーはジオン系のモノアイであり、背後から見るとバックパックへと伸びる動力パイプが丸見えだ。
実戦においては敵の目を欺くことに一度は成功するものの、ジオンに鹵獲されたジムの部隊があるという情報は連邦にバレており、交戦状態に突入。なんとか勝利をおさめたが、最後は援軍としてやってきたジオンの友軍に撃たれて爆散するという、元も子もない最期を遂げた。
同機のデータ収集を担った技術士官のオリヴァー・マイ中尉は、敵軍の誤認率の高さを認めながらも、自軍機との同士討ちの危険性を指摘。「このような兵器の開発意義を問う」と結論づけている。
ちなみに、ゲム・カモフはその独特の設定のためか、ゲームにもたびたび登場。『機動戦士ガンダムバトルオペレーション2』などで実際に操作することができる。
■重装甲のなかに特殊な機体を秘匿!
次に紹介するのは『機動戦士ガンダム00』に登場した「ガンダムヴァーチェ」だ。
初登場は第1話で、戦争根絶を掲げる私設武装組織「ソレスタルビーイング」が保有する4機の「ガンダム」のうちの1機である。
その外観は敵勢力から「デカブツ」と呼ばれるほど、ずんぐりとしたシルエットで、圧倒的な火力と高い防御力を兼ね備えた機体だ。
しかし、同機が鹵獲されそうなピンチに陥った際に、ヴァーチェの装甲をパージ。その中から真の姿である「ガンダムナドレ」が現れた。
いわばヴァーチェは、ガンダムナドレを秘匿するための偽装だったワケだが、その理由はナドレが装備する「トライアルシステム」にある。これを起動すると、同システムにリンクする機体を制御下に置くことができるという、まさに対ガンダム戦の切り札だったのである。
ヴァーチェの装甲をパージしたガンダムナドレの姿は非常にスリム。頭部のあたりから伸びる赤いコードが女性の髪のようにも見え、実に個性的なビジュアルが印象的である。