全世界累計発行部数1000万部を超える人気児童書シリーズ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(作:廣嶋玲子さん/絵:jyajyaさん)が、2024年12月についに実写映画化される。謎の駄菓子屋「銭天堂」の主人・紅子役を天海祐希さんが、「たたりめ堂」の店主・よどみ役を上白石萌音さんが演じることでも話題だ。
本作は願いを叶える駄菓子がもたらす予想外の顛末を描いているのだが、幸せを掴みハッピーエンドを迎える者がいる一方、エピソードによっては不幸な結末を迎える、怖い展開に巻き込まれる者もいる。
そこで今回はアニメ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』のなかから、後味が悪すぎる、怖いエピソードを3つ紹介したい。
■第43話「おもてナシ」コミュニケーションを軽んじた男のまぬけな結末
現在放送中のアニメ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』は、2Dセルの形式をとっているが、シリーズ当初は3DCGとしてスタートした。まずは、3DCG版から印象深いエピソード、第43話「おもてナシ」を紹介する。
人付き合いが苦手で無愛想なタクシー運転手・外山辰雄は、接客態度が悪いと上司に叱られてばかり。そんな彼が銭天堂を訪れ「相手が望むおもてなしができるようになる」という“おもてナシ”を手に入れる。
“おもてナシ”を食べた外山は、口が勝手に相手の望む言葉を喋り、体も相手の期待に応じて動くようになる。乗客たちは大喜びし、大量のチップをもらった外山は「世の中ちょろい」と大満足していた。
ある日、客をタクシーに乗せる外山。その男性客はトランクを抱え、駅まで急いでいるようだった。いつものように“おもてナシ”の効果で、裏道を使ってまでその男性客が望むように最速で送り届ける外山だったが、そのことが予想外の展開を招く。
実はその男性客は強盗だった。営業所で外山を待ち構えていた刑事が「この男を駅まで乗せましたね?」と尋ねてくるのだが、外山はその刑事が自分を疑っているに気づくと、いつものおもてなし精神で「強盗に協力しましたよ」と話を合わせてしまい、そのまま逮捕されてしまうのだ。
話自体はここで終わるのだが、外山がその後の取り調べや裁判でどのような態度を取るのか、心配せざるを得ない。人とのコミュニケーションを適当におこなう恐ろしさが浮き彫りになるエピソードだった。
■第59話「カモメアメ」孤独な男は本当にカモメになれたのだろうか…
普段は路地裏で駄菓子を売る銭天堂の紅子だが、ある期間、彼女が旅に出て駄菓子を売るという展開があった。その旅先でのエピソード、第59話「カモメアメ」を紹介しよう。
妻を亡くし、人生に希望を見失っている田口五郎。唯一の楽しみである釣りをしていても、誰もいない家のことを考えると、ますます孤独を感じてしまう。
そんな考えにふけっていた五郎だったが、気づくと隣で紅子が釣りをしていた。釣りは初めてだという紅子に釣り方を教え、会話を重ねるうちに、五郎は「カモメのように大空を飛んでどこか遠くへ行きたい」と本音を口にする。
それに対し、紅子は「うってつけの品が…」と呟くが、五郎の顔を見て何かを思い直し、「なんでもない、忘れて欲しい」と話を打ち切る。
今回は珍しく駄菓子は登場しないで終わるのかと思いきや、その後、五郎が紅子のトランクを開けてしまい、駄菓子を見つけてしまう。そしてそのなかからカモメの形をした“カモメアメ”を見つけ、衝動的に口にしてしまうのだ。
甘く爽やかで、どこか懐かしい香りにじっとしていられなくなった五郎は、勢いのまま走り出し、なんとそのまま断崖絶壁から飛び降りてしまう。
紅子曰く、“カモメアメ”は「食べた者をカモメにしてしまう」ということなのだが、五郎は本当にカモメになり遠く飛んでいったのか、それとも……? 非常に恐ろしい結末を想像せずにはいられないエピソードだった。