漫画の実写化作品といえば、やはり“原作キャラクターをいかに再現するか”という点にファンは注目してしまうものだろう。だが、主人公らと激闘を繰り広げる敵役も原作を再現するうえで欠かすことができない存在だ。
今回は、実写化での再現度はもちろん、“ハマリ役”ともいえる名演技を見せつけた俳優たちを紹介していこう。
■強さと美しさを併せ持つ最強の女剣士…『無限の住人』戸田恵梨香
1993年から『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載された『無限の住人』は、沙村広明さんのデビュー作にして代表作ともなった時代劇作品である。
不老不死の肉体を持つ隻眼の剣士・万次が繰り広げる剣戟アクションはもちろん、時代背景を超越した個性的な流派や独創的な武器の数々が見どころの本作。
2017年に公開された実写映画では、主人公・万次を元SMAPの木村拓哉さんが演じることでも話題を呼んだ。
個性豊かな敵キャラクターが登場する本作で、なかでも強さと美しさを両立し話題となったのが、女剣士・乙橘槇絵を演じた戸田恵梨香さんだ。槇絵は最強の実力を持つ剣士でありながら、同時に遊女としての妖艶な姿も披露する二面性が魅力のキャラクターだ。
戦闘では長刀と三節棍を掛け合わせた特殊武器・“春翁”を操って戦うのだが、戸田さんは原作に描かれていた“舞”というキーワードを汲み取り、より優雅に、常に舞い踊る姿をイメージしたアクションを心がけたのだという。
戸田さんにとって本格的なアクションへの初挑戦作品となった本作。主演となる木村さんからもアドバイスを受け、撮影のなかでアクションへの苦手意識を克服していったそうだ。
結果、槇絵が持つ儚げな美しさと練り上げてきた強さの両方を、戸田さんは見事に映画のなかで再現している。
アクロバティックな身のこなしから放たれる攻撃の数々は、力強さのなかにまさに“舞”を彷彿とさせる美しさを秘めている。最強の女剣士の凄まじい戦闘力はもちろん、彼女が作中で披露する美貌からも目が離せない。
■ストイックに再現された原作同様の圧倒的存在…『亜人』綾野剛
2012年より『good!アフタヌーン』(講談社)で連載された桜井画門さんの『亜人』は、不死の肉体を持つ新生物・“亜人”の存在を主軸に置いたアクションバトル漫画だ。
主人公の高校生・永井圭は事故に遭ったことで自身が“亜人”であることを知り、それまでとは異なった非日常の戦いに巻き込まれていく……というストーリー。
劇場アニメやテレビアニメシリーズが続々と展開された人気作だが、2017年には佐藤健さん主演の実写版映画も公開されることとなった。
実写化ではキャラクターの年齢の設定をはじめ、ストーリー構成が変更された。なかでも原作を代表する名敵役を熱演したのが、佐藤役の綾野剛さんだ。
佐藤は原作にも登場する敵役で、ハンチング帽がトレードマークの男性である。一見、朗らかな好人物なのだが、その正体はゲーム感覚で人殺しをおこなうテロリストで、しかも“亜人”の特性を活かした戦闘方法を確立した、圧倒的な戦闘能力を誇る強敵なのだ。
原作では初老の男性として描かれているが、実写版では演者である綾野さんに合わせ、やや若いキャラクターに設定が変更されている。
しかしながら原作同様の性格破綻ぶりは健在で、そんな雰囲気でもないシーンで、ことあるごとに「永井くーん!」と嬉しそうに声を上げる姿が恐ろしい。綾野さんの怪演により、殺戮と破壊を楽しむ佐藤の姿が活き活きと再現されていた。
綾野さんはこの役のために4カ月にわたる肉体改造に取り組んだそうで、作中のアクションシーンのなかで鍛え上げた肉体を存分に披露している。敵役としてのハマりどころもさることながら、俳優のストイックな役作りにも驚かされてしまう。