■令和っ子のインパクトに残ったストーリーは?

 単行本を読み進めた娘に、インパクトのあったストーリーは何かを聞いてみた。

 最初に出たのは「大四畳半惑星の幻想」である。これは、昔の地球によく似た“明日の星”に降りた鉄郎とメーテルがパスを盗まれてしまい、ボロアパートに住むことになる話だ。そこで出会った足立太という青年や、大家との人情味あふれる交流が描かれている。

 娘は「大量のパンツが押し入れから出てくるシーンには若干引いたけど……珍しく前向きなストーリーに好感が持てた」と言っていた。

 また、「好奇心という名の星」も挙げていた。この話では「好奇心」という星に捕まったメーテルたちが服を脱ぐよう命じられ、体の中身まで見せろと命令される。怒った鉄郎が星を切り裂くと、中身を見られた星は恥ずかしさに耐えきれずに自爆してしまうというエピソードだ。

 娘は「好奇心を持つことは良いことだけど、過剰な好奇心は人を傷つけることもあるんだよね……」と、しみじみ話していた。

 このほかにも「明日の星」では「地球に似た惑星でホッとした」と顔をゆるませ、「装甲惑星」では「メーテルの謎がより深くなった」と考察するなど、各エピソードごとに嬉々として感想を話してくれた。

 娘は1話読むたびに感じることがあったようだ。『銀河鉄道999』は、過去には学校の授業で取り入れられたり、哲学対話の題材として使われたこともある。本作は過去に限った話ではなく、現在の若者が読んでも十分に学ぶことのできる作品だとあらためて感じた次第だ。

 

 娘は普段スマホの動画ばかり見ており、漫画はほぼ読まない。そのため、読んでも途中でやめちゃうかな……なんて思っていたのだが、そうではなかった。

 松本さんの描く壮大な宇宙作品『銀河鉄道999』は令和っ子の気持ちも掴み、作品の世界観は、もしかしたら彼女の生き方に影響を与えたかもしれない。素晴らしい作品を娘に読ませてあげられたことに、誇りを感じる筆者であった。

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