尾田栄一郎氏の人気漫画を実写ドラマ化した、Netflix版『ONE PIECE(ワンピース)』。原作漫画の内容をそのまま踏襲するかと思いきや、ストーリー構成などに変更も加えられ、視聴して驚いた人も多いのではないだろうか。
とはいえ、実写ドラマ版の製作総指揮は尾田氏自身が務めているので、作者の知らないところで勝手な改変が加えられたわけではなさそうだ。ある意味、作者公認の変更点と言えるのかもしれない。
それも原作漫画では見られなかった意外な人物同士の絡みや、完全に原作になかった描写なども追加されていた。
そこで今回は、Netflix版『ONE PIECE』にあった、「意味深な改変シーン」をいくつか見ていこう。
■海賊王ロジャーの処刑に立ち会った意外な人物とは
記念すべき第1話で、まず視聴者の目を奪ったのは、冒頭のゴール・D・ロジャーが処刑されるシーンだろう。彼が処刑され、大海賊時代が幕を開けるという展開は、原作の流れをそのまま踏襲している。
ここで大きく変更されたのは、このロジャーの処刑にモンキー・D・ガープが立ち会っていることだ。ガープといえば、“海軍の英雄”と呼ばれる伝説の海兵で、ロジャーとは幾度も衝突した好敵手と呼べる関係にある。
現在のところ、原作漫画で直接的な戦闘が描かれたことはないが、生まれてくるロジャーの実子(エース)をガープに託すなど、陣営を越えた信頼関係を築いていたふたりだ。
それを踏まえると第1話の処刑シーンの変更点は、ファンとしても納得できるかたちなのではないだろうか。
また、このロジャーの処刑を見届けようと集まった群衆のなかには、若かりしシャンクスやミホーク、のちに海軍に入るスモーカーらしき少年や、ルフィの父ドラゴンに似た素顔が見えない人物なども確認できた。
実は、過去に映画の入場特典として配布されたコミックス「0巻」のなかには、ミホークやシャンクス、ドラゴンらがロジャーの処刑を見届けている描写があったが、本編には描かれていない。
また、処刑台の上でロジャーが「こいつ(手枷)を外せ、かゆくなってきた」という場面がある。これはアニメの48話にあった、スモーカーの回想内でのロジャーのセリフ「こいつを外してくれ、かゆくてしょうがねぇんだ」をオマージュしたものだろう。
このように第1話から大幅な変更と、粋な原作再現がうまく織り交ぜられており、かつファンも納得できるかたちに昇華したのは見事といえる。
■海上レストランで、まさかの共演が実現!
原作漫画のほうでガープが初登場するのは、ウォーターセブン編およびエニエス・ロビー編が終局を迎えたコミックス第45巻のこと。だが、実写ドラマ版では第1話の冒頭から登場する。そのガープがかかわってくる、大きな改変シーンはほかにも存在する。
実写ドラマの第7話では、ルフィらがアーロンパークへと向かった裏側で、ガープはコビーとヘルメッポ、そしてボガードらを引き連れて海上レストラン「バラティエ」を訪れる。もちろん原作漫画に、このような展開はない。
ここでガープは、バラティエのオーナー兼料理長のゼフと対面する。ガープは「赫足(あかあし)のゼフ」という、彼の海賊時代の異名を知っており、ルフィを探すために訪れたことを伝えた。
するとゼフはガープに肉料理を振る舞い、ふたりは酒を呑みながら会話に興じる。そのなかでゼフが、ルフィはゴールド・ロジャーに似ていると告げると、ガープは「あいつを(ロジャーと)同じ目にあわせたくない」と本音らしきものを漏らした。
かつてクック海賊団の船長だったゼフと、海軍のガープが会話する一連のシーンは、完全にドラマオリジナルの展開だ。だが、話の内容といい雰囲気といい、このふたりの邂逅にはなぜかワクワクさせられた。