■「次回こそもっと上手に振りたい」会場で見たサイリウムの波

 筆者が見た映画は土曜日の午前回ということもあり、客席の後方から8割方が埋まっていた。通常の映画なら見えにくいという理由で避けがちな前列に座る人もちらほらいた。そして、女性ファンが多いコンテンツかと思いきや、男性同士のお客さんもいたことが印象的だった。

 当日、何度も通っているという友人からサイリウムだけは持っていくべきという助言を受けていたが、映画が始まる前からこの「サイリウム芸」に圧倒されることとなる。

 予告で『モアナと伝説の海2』が流れたときには皆でサイリウムを青色にし、ゆるやかに揺らして海を表現していた。また映画館でお馴染みの「映画泥棒」のときは赤色のサイリウムをクルクル回してパトランプを表現。なるほど、うまいものだと感心してしまう。

 その後、禁止事項の案内が流れたときにはサイリウム2本を赤く光らせクロスさせて「×」を表現。サイリウムは最低でも2本持ってくるべきだったことをこの時点で後悔した。

 さて、サイリウムOKなだけでなく、もちろん劇場では声出しもOK。コールアンドレスポンスだけでなく、「映倫ありがとー!」「エイベックス・ピクチャーズありがとー!」「タカラトミーアーツありがとー!」「タツノコプロありがとー!」と制作サイドへの感謝の声も響いた。

 いよいよ始まった本編では、見事に統制がとれたサイリウム芸と声出しにただただ圧倒された。全力の大声で叫んでいる人ばかりではないのが救いだったが、おそらく複数回通っている人ばかりなのであろう。「このシーンはこう」というのが明確に分かり、美しい一体感を感じた。

 しかし後半のある演出ではサイリウムを消していなければならず、少々手間取った。同時に「次回こそもっと上手に振りたい」と向上心がわく一幕でもあった。

■何度も足を運ぶことで没入感も変わる?

 初めて体感した『キンドラ』は、頭を空っぽにして没頭できるリアルなライブそのものだった。元が少女向けのアニメのためか、ターゲット的に大人を意識した内容ではないかもしれない。しかし、目の前で繰り広げられる展開に没入することができ、さらに何度も足を運ぶことで面白さは増すように感じた。映画館といえどそこはライブ会場。そして、皆の一体感で会場を盛り上げてこそ、作品がもっと輝くようにさえ思える。

 さて、実際に自分も見てみたいと思っても、初心者ではなかなかサイリウムの色変更などの不安も多いだろう。そういう人は、後方の座席に座れば会場の様子がよくわかる。筆者の見た回では最前エリアの客が会場中のサイリウム芸を牽引してくれた。サイリウム数本で劇中のあんな場面やこんな場面を面白おかしく再現しており、それを見ているだけでも楽しかった。

 言葉で説明しようとしてもうまく伝えられないのが、奇想天外な『キンドラ』の魅力。ライブやヒーローショー、没入体験のできるイマーシブなどが好きな人はどっぷりハマれるだろう。ちなみに応援上映ではない通常上映もあるので、ハードルが高いという人はまずはこちらから初めて見るのもいいだろう。

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