■じわじわ相手を追い込む恐ろしさ…「ガイアVSシコルスキー」

 勇次郎にボコボコにされたガイアにも面白い戦いがある。それがシコルスキーとの一戦だ。両者ともに何でもありを謳っているが、この戦いでシコルスキーの化けの皮が剥がれることになる。

 ガイアは「環境利用闘法」として、地下闘技場の砂に混ざっている歯や爪を砂ごと高速で投げつけ、シコルスキーを遠距離から攻撃した。続いて、自ら砂をかぶると周囲の景色に溶け込んでしまう。

 そこからのシコルスキーは見えない相手との戦いになる。ガイアはカウントをしながら攻撃を仕掛け、じわじわと恐怖を与えていった。シコルスキーにはガイアが見えないから、防御に徹するしか逃れる術がない。しかもガイアは防御の隙間を狙って的確に攻撃をしてくるのだ。

 そして、確実に来るのに防げない攻撃に対する恐怖から、シコルスキーはついに「オレの負けだッ〜~~許してくれェェッ〜~~」と降参してしまった。

 これまで範馬刃牙やビスケット・オリバ、ジャック・ハンマーと戦っても心折れることがなかったシコルスキーが、あっさりと負けを認めたのだ。ガイアの強さは本部と同じように格闘技では測れないものがある。

■まさにドリームマッチ!「マウント斗羽VSアントニオ猪狩」

 最後は『グラップラー刃牙 外伝』に登場したマウント斗羽とアントニオ猪狩の名勝負。ふたりとも昭和の有名プロレスラーがモデルになっているのは多くの人が知っているはずだ。

 そんなふたりは、作中ではあまり活躍せずあっさりと身を引いてしまった。しかし、なんと『グラップラー刃牙 外伝』でふたりの戦いが描かれることになり、興奮したプロレスファンも多かっただろう。というのも、モデルとなったジャイアント馬場さんとアントニオ猪木さんは公式で対戦しなかったと思われている(※ただし若手時代には実現している)からだ。

 だからこそフィクションでもいいから見てみたい!という人もいたはずで、ふたりの戦いには胸を熱くさせられる。本人たちが得意とするプロレス技の応酬、相手の技から逃げずに受け切る気迫、互いに敬意を払いながら全力を尽くす姿……と、とにかくプロレス愛が詰まった戦いとなっていた。

 これには、現実ではあり得ないことを描ける漫画の楽しさというものも感じてしまう。同時に、プロレスという競技の素晴らしさも改めて思い知った。

 

『刃牙』シリーズは、かませ犬キャラにもスポットをしっかりと当てている。そして、対戦相手によっては逆に圧勝してしまう。実戦重視だからこそ、何が起こるか分からない……それもまた本作の面白さのひとつである。

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