本部以蔵に愚地克巳も…『刃牙』シリーズでかつての「かませ犬」たちが輝いた「奇跡の名勝負」の画像
『グラップラー刃牙』完全版: BAKI THE GRAPPLER (13) (少年チャンピオン・コミックス)

 板垣恵介さんによる『刃牙』シリーズには、数多くの格闘家が登場して作品を盛り上げている。しかも、使用する格闘術が豊富でいろんな必殺技もあるから面白い。

 作中では多種多様な闘技者が我こそが最強だと名乗りを上げるが、もちろん上手く行かないパターンもある。強敵と思わせておいてあっさり敗れてしまう、いわゆるかませ犬というやつだ。

 そのため「全然強くないだろ!」と突っ込まれたりもするが、戦う場所や相手によっては化けることもある。そこで今回は、当初はかませ犬かと思われたキャラが見せたベストバウトを紹介したい。

■何でもありの戦いが見ごたえたっぷりだった「本部以蔵VS宮本武蔵」

 まずは本部以蔵の戦いを見ていきたい。本部は範馬勇次郎を目標として過酷な修行を続けていた柔術家である。作品初期から登場して、勇次郎に勝負を挑むもあっさりと敗北。「最大トーナメント編」では、初戦で大相撲の現役横綱である金竜山にあっさりと負けた。

 その後は活躍の場がないままストーリーが進んでいくが、ようやく最大の見せ場がやってくる。それが『刃牙道』での宮本武蔵との一戦だ。

 本部が最も得意とするのは「超実戦柔術」で、合戦などで用いられる戦闘術である。それを活かすことができるのは、やはり何でもありという状況下……。

 武蔵はそんな相手にふさわしく、本部が全力を出す機会がようやく訪れる。本部は、暗器や毒を用いて先手を取って攻撃を仕掛けた。更に防具の着用など武蔵対策を万全にしたことにより、武蔵は反撃するも絞め上げられて気絶してしまう。

 その姿を見た他の闘技者は、本部のことを高く評価した。誰もが本部には無理、と思い込んでいたからだ。

 本部は他にも公園での戦いで柳龍光やジャック・ハンマーにも勝利しているので、決して弱くはないということが立証されている。やはり彼はルールや場所に縛られない方が、真価を発揮するといえるだろう。

■成長ぶりに魅せられた「愚地克巳VSピクル」

 次は愚地克巳のベストバウトを紹介したい。それはピクルとの一戦である。それまでの克巳は、「最大トーナメント編」で烈海王に一撃で敗北。「最凶死刑囚編」ではドリアンとドイルに煮え湯を飲まされることになる。

 いいところなしでピクル登場を迎えると、範馬勇次郎にも「だから相手にもされんのだ――――俺にも刃牙にも父親にも」と馬鹿にされてしまう。そこから克巳が初めて覚悟を持って挑んだのがピクル戦である。必殺技であるマッハ突きを昇華させることで、ピクルを倒す武器を手に入れたのだ。

 戦いが始まると克巳はマッハ突きを連発し、その腕や足は反動でボロボロになってしまう。そして、渾身の一撃を放ったことにより、克巳の右腕は完全に機能を失った。

 ピクルがその右腕を食いちぎると、克巳は食われる覚悟を見せる。しかし、ピクルはその右腕を崇めて戦いをやめたのだ。克巳の努力の結晶そのものを認めたということでもある。

 これには、観戦していた神心会の門下生全員が正座をして克巳に敬意を払う。克巳の成長ぶりが伝わる戦いとして見ごたえ十分だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3