32年の時を経て放送が始まった新作アニメも好調の『キン肉マン』(ゆでたまご 原作:嶋田隆司さん、作画:中井義則さん)。1979年から約8年にわたって『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていた当時、ギャグ漫画から格闘漫画へと転換したきっかけが、伝統の「超人オリンピック」だった。
主人公・キン肉マンのライバルとして、ロビンマスクやラーメンマン、ウォーズマンといった、のちにアイドル超人として人気を博す面々が死闘を繰り広げており、読者を熱狂させた。だが「超人オリンピック」ではちょっと“ふざけたバトル”も醍醐味で、放送中の「完璧超人始祖編」では考えられないような“迷試合”もあったもの。
そんな『キン肉マン』における、まさかの展開で勝敗が決まった「超人オリンピック」の試合を振り返ってみよう。
■勝敗を決めたのはなんとホームランボール!?「キン肉マン対キングコブラ」
第21回超人オリンピックの1回戦は、Aブロックが後楽園球場で、Bブロックが甲子園球場で開催されている。キン肉マンはキングコブラと初戦で対決したのだが、リングはなんとラッキーゾーンに設置されていた。
しかも、阪神タイガース対読売巨人軍の試合中に、だ。みんな野球を見に来ているので、プロレス自体が邪魔になっている。……そもそもラッキーゾーンにプロレスリングは置けるのか? 当時はブルペンになっていたが、控え投手たちはどこに行ったのやら……。
「ラッキーゾーンで 試合ができるか〜っ!!」と怒り心頭のキン肉マンはフェンスをよじ登って抗議するのだが、そこに掛布雅之選手のホームランが直撃。倒れ込むキン肉マンを尻目に、父親のキン肉大王が横でちゃっかり手を振って喜んでいるのが面白い。
そういえば、大王の名前はマユミだった。当時、トレードで阪神に移籍していた真弓明信選手が名前のモデルだったらしいので、大王も掛布選手の活躍に大喜びしていたのだろう。ちなみにキン肉マンの名前はスグル。これは、巨人の江川卓選手がモデルだからライバル球団だ。
さて、試合は体がロウソクでできた超人のキングコブラが流れ出るロウを投げ飛ばし、キン肉マンを固めてしまう。動けないキン肉マンに襲い掛かるキングコブラだったが、そこへ2本目の掛布選手のホームランボールが飛んできて直撃。頭にかぶせているコブラがズレ落ちてしまった。
これに痛がるキングコブラ。勢い余ってキン肉マンにぶつかってしまい、ロウが剥がれてしまう。チャンスを得たキン肉マンはキングコブラの頭をロープに擦り付け、摩擦で火を付けたことによりなぜか試合終了。キン肉マンの勝利となる。
その後、頭のロウソクに火がついたキングコブラは、球場外の売店でポテチを購入しようとしているベンキマンに救助を依頼するも、ものの見事に便器に流されてしまっていた……。
■アリダンゴのままにしておけば勝ってた? 「キン肉マン対ベンキマン」
第21回超人オリンピックで、キングコブラの次に2回戦でキン肉マンと対戦したのがベンキマンだ。
このベンキマンは、その名の通り体が水洗便器(いわゆる和式便器)になっており、頭に汚物まで乗せているビックリ仰天なキャラだ。選手入場のときには、なんと自身の応援団から汚物を投げられているのに、まるで“光栄の至り”かのように片ヒザをついてポーズを取っていた……。
さて、試合前のデモンストレーションで、便器に超人たちを流すという荒業を見せつけるベンキマン。カニベースのようにそのまま便器に流されるのも嫌だが、ベンキマンは相手が体格の大きい場合、アリダンゴのように丸めてから流してしまう。
試合がはじまり、さっそくアリダンゴにしたキン肉マンをきっちり便器へ流し込んだベンキマン。しかし、なんとキン肉マンは自らのパンツを詰まらせて脱出。その影響で大量の水が逆流してしまい、上空に舞い上がったベンキマンはマットに叩きつけられてノックアウトしてしまった。
試合後、リング外は大量のあふれた水で埋め尽くされており、泳げるほどというからとんでもない。だって、便器の水だし……何かと恐怖だったものだ。
それにしてもベンキマン、アリダンゴのまま終わっていたら勝っていたはずだったが……。