■不死身、ゆえに“最強”

 サラ・ザビアロフに“凶暴で野獣のような男”と評されたヤザンは、まさに野獣の如き猛攻で「ニュータイプ」のパイロットたちを苦しめるが、戦闘の勝敗としては敗走を余儀なくされることが多かった。幾度となく繰り広げられたカミーユとの戦闘においては、機体の一部が破壊されるなど自身が不利な状況に陥るとすぐさま戦場から脱出。その判断力の高さゆえの生命力を見せつけた。

 第49話「生命散って」では、「ニュータイプ」として覚醒したカミーユの驚異的な力によってハンブラビが爆散する直前、ヤザンは脱出ポッドで脱出してそのまま作中から退場。そして、続編の『機動戦士ガンダムZZ』で再登場を果たす。

 本作では物語上の立ち回りとして多少のコミカルさを携えながらも、野獣らしく狡猾にZガンダムの強奪に踏み切ったりアーガマを襲撃する様子が描かれた。しかし第8話「鎮魂の鐘は二度鳴る」にてあえなく敗走し、序盤で再び表舞台から姿を消してしまう。

 『ZZ』以降ヤザンの動向は不明となっていたが、漫画『機動戦士ガンダム MSVーR ジョニー・ライデンの帰還』(KADOKAWA)にて、再びその姿を現した。

 本作でヤザンはヴァースキ・バジャックという偽名で地球連邦軍の特殊部隊「ナイト・イェーガー」に属したのち、「ヴァースキ隊」を率いて相変わらず戦場に身を置く様子が描かれている。インド神話の蛇神“ヴァースキ”の名を冠するだけあって、「ナイト・イェーガー」にて搭乗していたジム・ナイトシーカーに“海ヘビ”が装備されていたのは粋な演出であろう。

 当初は自身がヤザンであることを頑なに伏せていたが、物語後半、イングリッドに対し「オレに何をして欲しい! 言ってみろ! このヤザンがお前の願いを叶えてやるぞ!」と発言。なんとも彼らしい言い回しで、その正体を真に晒したのが印象的であった。

 

 『ガンダム』宇宙世紀シリーズの戦場では、「ニュータイプ」や「強化人間」という超人的な能力を備えたパイロットがひしめいている。だからこそ、「オールドタイプ」であるヤザンの立ち回りがいかに見事であるかが際立ち、そこにロマンを感じるのだ。

 今後も展開されるであろう派生作品で、さまざまなキャラクターが躍動するたび、ヤザンの凄さは再認識される。その魅力は色褪せることなく、語り継がれていくのだろう。

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