宇宙世紀『ガンダム』シリーズで存在感、ニュータイプに牙をむく野獣…オールドタイプ最強「ヤザン・ゲーブル」という男の画像
アニメ『機動戦士Zガンダム』DVD Volume.9(バンダイビジュアル)

 テレパシーや思念体との会話、超人的な直観力など『ガンダム』宇宙世紀シリーズの戦場で猛威を振るう「ニュータイプ」のパイロットたち。その圧倒的な能力の前に、常人である「オールドタイプ」のパイロットたちは成す術なく敗れ去っていくが、そんな「オールドタイプ」のなかでも最強と謳われているのがヤザン・ゲーブルである。

 今回は、『ガンダム』シリーズが持つ長い歴史のなかでも、いまだにファンの間で「オールドタイプ」最強と評されるヤザン・ゲーブルについて、その魅力とともに振り返ってみよう。

■己の信念を貫く頼れる兄貴分

 褐色肌の引き締まった筋肉、金髪のリーゼントで眉なしの鋭い眼差しという威圧感たっぷりの風貌であるヤザン・ゲーブル。地球連邦軍の精鋭部隊「ティターンズ」に所属し、グリプス戦役の厳しい戦場を駆け抜けた、まぎれもないエースパイロットである。

 その凶暴な見た目とは裏腹に、コロニー落としや毒ガスなど人道に反する大量虐殺を嫌い、己の実力でねじ伏せるような直接戦闘を好む。戦場にいながらも時折笑みをこぼすほどに飄々としたキャラクターだ。

 好戦的だが独断で先行するような身勝手さはなく、共に戦う部下たちへの面倒見の良さはヤザンの魅力の一つだろう。

 たとえば、『機動戦士Zガンダム』第26話「ジオンの亡霊」にて、出撃前、新兵のアドル・ゼノに「慣れたか?」と声をかけるところから始まるシーン。真剣な面持ちのアドルに対して今回の戦闘での立ち回りを説き、最後にアドルの股間を鷲掴みにし、「縮んどるぞぉ! まだ出撃前だ、しっかりせい!」と、彼なりの檄を飛ばすのである。

 出撃後は、母艦のアレキサンドリアから自身を巻き込みかねない対艦射撃が決行されると、指揮を執るジャマイカン・ダニンガンへの怒りを募らせるヤザン。敵機であるスーパーガンダムをわざとアレキサンドリアに誘導すると、自身に対する砲撃を避けてブリッジへ直撃させることで、ジャマイカンを謀殺するという狡猾さを見せていた。

 部下への情は厚く、気に入らない上官には徹底的に報復するというヤザンの振る舞いは、頼れる兄貴分としての印象を残し、多くの視聴者に愛される要因となった。

■「ニュータイプ」に牙を剥く脅威の戦闘センス

 ヤザンが今もなお愛されている理由は、その人間性だけでなく「オールドタイプ最強」と評されるほどに高いMS操縦技術を持ち合わせていたからであろう。

『機動戦士Zガンダム』第25話「コロニーが落ちる日」にて。ヤザンは可変モビルアーマー(MA)・ギャプランで出撃し、カミーユ・ビダン搭乗のZガンダムと会敵する。互いにMA形態のドッグファイトが繰り広げられると、ヤザンは急速旋回しウェイブライダー左翼の一部を破壊するのである。

 同じく第26話「ジオンの亡霊」での白兵戦においても、ヤザンは常にカミーユを圧倒。Zガンダムに馬乗りになりビーム・サーベルを突きつけるほどに、彼を追い詰めることに成功している。

 ヤザンの実力を示したシーンは上記に留まらない。第35話「キリマンジャロの嵐」ではハンブラビの特殊電撃兵器“海ヘビ”を用いて、クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)の百式を退けているし、第49話「生命散って」では、エマ・シーンのガンダムMk-IIを圧倒してみせている。

 さらに、そこへ救援に来た戦艦・ラーディッシュの弾幕を無傷ですり抜け難なく撃沈するなど、「ニュータイプ」たちを相手にしながら驚異的な戦闘センスでこれでもかというほどの戦果を挙げているのだ。

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