■窮地で交わされる両翼の固い約束

 最後に、同じく「ワノ国編」にて、二人の間だけでかわされた会話のシーンを紹介しよう。

 鬼ヶ島での“百獣海賊団”の幹部・クイーンとの戦闘の最中、サンジは自身の身体に異変が起きていることに気付く。強力な締め技を食らっても、巨大な剣で切りつけられてもダメージがまるでないのだ。その強靭な肉体は、まさに自身が“ジェルマ66”の家族だったとまざまざと思い知らされたものだったのである。

 突如、目の前で吹き飛んだ非戦闘員の女性に畏怖の目で見つめられると、自身に身に覚えがないことからいよいよ感情まで失いつつあるのかと不安に駆られてしまうサンジ。のちにこれはクイーンがステルス化して行った蛮行だと発覚するが、己に責がある可能性を危惧したサンジは電伝虫を利用して、キングと戦闘中のゾロに連絡する。

 「これから俺たちは...「百獣海賊団」に勝利する だが決着の後......もしおれが“正気”じゃなかったら お前がおれを殺せ」

 普段はいがみ合い互いの実力を誇示するばかりの2人だが、もし正気を失ってもゾロならば自分を躊躇なく殺すことができるだろうという、まさに全幅の信頼を置いたサンジのこの発言。ゾロもその理由を追求することはなく、「決着後の楽しみができた...!! だったらてめェ...それまで死ぬなよ」と返し、通話が終了する。

 2人の間だけで交わされた固い約束。サンジが抱くゾロへの確かな信頼と、ゾロが放った「死ぬなよ」というまっすぐな言葉には、思わずジーンとしてしまう。

 “麦わらの一味”のなかでもサンジとゾロにしかできないであろうこのやり取りは、2人の名シーンの一つとして今後も語り継がれていくことだろう。

 

 今回紹介した以外にも、宴の際にはゾロがサンジに酒を注ぐ様子が見られたり、ルフィが海賊王になるという未来が現実味を帯びてきていることに2人で胸を躍らせる様子など、仲間である以上当然とはいえ、その微笑ましい描写には心温まってしまう。

 大いに盛り上がりを見せている『ONE PIECE』の最終章で、ゾロとサンジが両翼としてどのように躍動するのか、今後も注目していきたい。

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