『シティーハンター』大の女好きだった冴羽獠が「男を守る」姿を見せたレアエピソードの画像
『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』[DVD](アニプレックス)

週刊少年ジャンプ』(集英社)で1985年から連載された、北条司氏の名作『シティーハンター』。令和の今でも劇場版が公開されるなど、ジャンプを代表する人気作品のひとつだ。

 本作の主人公・冴羽獠は大の女好きである。表の社会では片付けられないような問題を解決する“スイーパー”として、依頼人の美女を守り続ける。相棒の槇村香に何度も100トンハンマーを食らわせられながらも、一向に女好きはやめられない。

 まあ、それも獠の魅力的な一面なのだが……。ただ、そんな彼にも実は男性からの依頼を引き受けたり、時には守ったりするシーンもあった。今回は彼のそんな意外な一面を振り返ってみよう。

■心がふるえたときに依頼を受ける! 健気な少女のためには男も守っちゃう「待ち続ける少女の巻」

 普段は女好きでお調子者の獠だが、依頼を引き受けるのは誰でも良い訳ではなく、“依頼主の心がオレの心をふるわせた時”という信念を持っている。

 第19話の「待ちつづける少女の巻」にて。依頼をしてきたのは萩尾という冴えない男で、大物政治家・天地の元運転手である。彼は天地が起こしたひき逃げ事故の罪を着せられ、表向き死んだことになっていた。

 だが、父親を忘れられない娘はいつも公園で萩尾の帰りを健気に待っており、おまけにそれを一年間欠かすことなく続けているという。泣きそうになる設定だ。萩尾は獠に自分をもう一度殺してほしいと伝え、死を偽装して天地の目を欺き、娘と静かに暮らしたいと訴える。

 萩尾はまだ天地に監視されており、娘と会うことができない。そんな状況で、彼は「お願いだ 冴羽さん!! わたしにあの娘を抱かせてくれ!!」と魂の叫びで獠に依頼する。

 そこへなんと騒ぎを見ていた娘が登場し、「おじさん……あたしとどこかで会ってない?」と萩尾に聞くのだが、体を震わせて「い…や しらないよ」と答えるしかないのが切ない。

 その後、パパは今日来るのかい?という獠の質問に対し、今日じゃなくてもいつかくるはずと言い切る娘に、獠は「きっとくるさ」と優しく諭す。彼女の健気な姿に“心がふるえた”獠は、依頼を引き受けようと決意するのだった。

 萩尾は実は演技がけっこう上手く、作戦のため天地の秘書を脅すシーンなどはなかなかのものだった。香と女子高生のさやかとのいがみ合いも面白く、見どころ満載のエピソードだ。

■あの獠が少年を一人前の男として認めた!? 「かわいい家庭教師!の巻」

 第56話の「危険な国からきた女!の巻」では、クーデターが起こっているエマリア共和国から逃亡してきた少年・松岡拓也と家庭教師の川田温子が登場。エマリア政府の機密文書を反乱軍に渡そうとした疑いで、通信社の記者である拓也の父が捕らえられる。

 機密文書の在り処を探す政府諜報員によって、息子の拓也も狙われたのだが、温子によって何とか日本へと逃げてこられた。

 警察も信用できない温子は伝言板にXYZを残したのだが、日本まで追ってきた諜報員によって襲われたところを、待ち合わせ場所から追跡した獠によって助けられる。

 深い傷を負ってまで拓也を助けようとする温子のため、獠は依頼を引き受ける。続く57話の「かわいい家庭教師!の巻」では、温子をめぐって拓也に対して妙なライバル心を抱く獠にはウケたが、安心しきって温子と一緒に寝ている拓也を見て、「寝顔だけはかわいいな……」とさりげなく優しい表情をするのがまたカッコいい。

 そして、地下の射撃場で自分も拳銃を撃ちたいと言う拓也。彼は自分で自分を守りたいと言い、そうすれば温子を危険な目にあわせずに守ることもできると真剣に訴えるのだ。

 その決意に心を打たれた獠は、拳銃の扱いをレクチャーし、これまでぼうずと呼んでいたのに拓也と名前を呼ぶ。そして、初めて名前で呼んでくれたことに感動する拓也に対し、「一人前の男を名前で呼ばないなんて失礼だろ?」とカッコいいセリフを口にした。

 あの獠が子どもを男と認めて銃の扱いを教えるなんて、かなりレアなストーリーで、改めて読み返すとさらに驚いたものである。

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