■「新しい経験、新しい世界」と出会えた作品

――そこから声優の道へと近づかれていったわけですね。声優になったあと、千本木さんにとっての転機のようなものはありましたか?

千本木 声優になって、自分のステップを一歩あがったなと感じた作品があります。『BEASTERS』(2019年/ハル役として出演)という作品なのですが、この作品ではアフレコ(映像に合わせて、演技を収録する)ではなくて、プレスコ(演技を先に収録して、その演技にあわせて映像を付ける)という方法で収録していました。

 アフレコでは、スタジオのモニターとマイクの方向を向いて芝居をするのですが、この作品では相手役の方と向き合って芝居をしたんです。これまでもいろいろなお仕事があって、いろいろな経験をさせていただいたのですが、主に自分がどうするか、自分ならこのセリフをどう言うかといった、あくまで自分の中で解決することが多かったです。でも、この現場では会話の相手に合わせて、相手のために(お芝居)するということを教わったような現場でした。すごく新しい経験だったし、新しい世界だったなと思います。

アニメ『ダンジョンの中のひと』 千本木彩花さん演じるクレイ (C)双見酔/双葉社・製作委員会の中のひと

――絵に合わせるだけじゃなくて、相手に合わせる。まさにお芝居の次元がひとつ変わった瞬間ということですか。そのときの収録はどんなかたちで行われたんですか?

千本木 お相手は小林親弘さん(『BEASTARS』レゴシ役)だったのですが、小林さんは舞台にも出演されている方なので、すごく柔軟な姿勢で収録されていて、ある意味で収録の現場が演劇の舞台のような感覚があったんですよね。

 それと、スタジオの床の上にゴロゴロと転がりながら録ったりとか、私たちの声をどんなときでもガンマイクを使って収録したりもしていました。現場のスタッフのみなさんがすごく頑張ってくださったので、そういうところに刺激を受けて、お芝居というものを考えることができました。それは今の自分にすごく活きていると思いますね。

――そんな経験も活かして臨む、『ダンジョンの中のひと』のクレイ役のお芝居も楽しみです!

千本木 『ダンジョンの中のひと』は、いわゆる裏方のお話です。裏方が頑張っているから、探索者たちがダンジョンの中を快適に冒険できる、という。表からは見えない仕事だけど、そういう人たちが努力しているから、多くの人が楽しんでもらえるものができあがるというモチーフは、私の仕事にも通じるところがありますし、きっと多くの方が同じような感覚をお持ちだと思います。

 多くの方が共感できる作品になっていると思うので、この『ダンジョンの中のひと』を見たあとに「明日も仕事頑張ろうかな」って思っていただけたら嬉しいです!

 

【プロフィール】
千本木彩花(せんぼんぎ さやか)
埼玉県出身、11月24日生まれ。高校在学中にアニメ『帰宅部活動記録』九重クレア役で声優デビュー。代表作に『甲鉄城のカバネリ』無名役、『転生したらスライムだった件』シュナ役、『ダンジョン飯』マルシル役など。

★アニメ『ダンジョンの中のひと』は、TBS・MBS・BS-TBSほかにて好評放送中!

★アニメ『ダンジョンの中のひと』公式サイト https://dungeon-people.com/

(C)双見酔/双葉社・製作委員会の中のひと
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