■大人気漫画の原点を感じざるをえない…『バオー来訪者』

 「ジャンプ黄金期」には、時代を経て愛され続けている長寿作も数多く登場しているが、現代においても新たな物語が登場し、読者を魅了し続けているのが、1986年から連載が始まった荒木飛呂彦さんの代表作『ジョジョの奇妙な冒険』だろう。

 しかし実は、同じ「ジャンプ黄金期」に荒木さんが別のとある“打ち切り作品”を連載していたことをご存じだろうか。その作品こそ、1984年から連載された『バオー来訪者』である。

 最強の生物兵器・バオーに寄生されてしまった主人公・橋沢育朗が、その身に宿ったバオーの力を利用し、襲い掛かってくる脅威に立ち向かっていく本作。

 バトル漫画でありながら、グロテスクな描写やダークな展開を織り交ぜたホラーテイスト溢れるストーリーや、科学的な理論や知見を取り入れた能力解説など、『ジョジョ』に通ずる要素が全体にちりばめられている。

 戦いの日々や人々との出会いを通じ、己の使命に気付いていく育朗の成長劇も描かれた骨太な作品なのだが、当時はなかなか人気を獲得することができず、全17話で連載終了となってしまった。

 単行本全2巻という短さでありながらも、完成度の高い一作として知られる本作は、その独特の作風や世界観からいまもなお根強いファンを獲得しており、1989年にはOVA版が公開されるなど思わぬ展開を見せている。

 のちの大人気作『ジョジョ』にも繋がる、作者独自のエッセンスを味わうことができる一作といえるだろう。

 

 誰しもが知る名作たちがひしめき合う「ジャンプ黄金期」だが、大人気作の影に隠れた“知る人ぞ知る名作”も多い。残念ながら短い連載期間だったために短編のものが多いが、その完成度の高さからは、作者である漫画家たちの確かな力量を感じざるをえない。

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