■試験型ザクを相手に「ボール」が起こした奇跡
1996年から1999年にかけて製作されたOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』。その第1話の「二人だけの戦争」のなかで、シロー・アマダが駆った「ボール」が奇跡的な活躍を見せる。
型式番号「RB-79K」。「ボールK型」とも呼ばれる先行量産型ボールは、宇宙作業用の一人乗りポッドをベースに開発された機体だ。モビルスーツ開発においてジオン軍に後れをとっていた連邦軍が、“数合わせ”や“その場しのぎ”のために作ったとも言われ、兵士の間で「丸い棺桶(コフィン・ボール)」や「一つ目のマト(ワンアイズ・ターゲット)」などと揶揄されたことでも知られている。
1話の冒頭、劣勢の友軍を助けるため、シローは輸送艇に積まれていたボールに乗って出撃。このボールには姿勢制御用スラスターが増設され、サブアームと2連装キャノン「フィフティーンキャリバー」が装着されていた。
かたや相手となるザクIIは、上半身、脚部に熱核ロケットエンジンが搭載された「宇宙用高機動試験型ザク」である。言うまでもなく性能差は大きく、ボールごときがまともにやりあって勝てる相手ではなかった。
しかしシローに諦める様子はなく、漂う残骸を利用しながら奇襲をしかけようとザクに忍び寄る。気づかれたらマシンガンを浴びながら突撃し、射出したワイヤーをザクのボディに巻きつけた。
ザクはヒートホークでワイヤーを斬ろうとしたが、シローはボールのサブアームで抑えつけて阻止。さらにゼロ距離から2連装キャノンをぶっ放した。
その衝撃で自機も大破したものの、高機動試験型ザクを見事に撃破。味方を助けたいというシローの執念と思いきりの良さがたぐり寄せた、奇跡的な相打ちである。
今回は、ロートル機体に焦点をあてて振り返ってきた。最高のスペックを誇る最新鋭機の活躍シーンは見どころだが、時折このような旧式機体の活躍ぶりが描かれるのも、ガンダム作品ならではの魅力と言えるだろう。