■信さえ生き残れば…飛信隊全員で信を守り抜いた「龐煖」戦

 原作の飛信隊は今や万を超えているが、勝ち続けている隊ではない。序盤最大のピンチが龐煖との戦いだった。

 馬陽の戦い開戦早々、馮忌の首を取ったことで盛り上がる飛信隊だったが、その夜、野営地で龐煖の強襲を受ける。龐煖は、この馬陽の戦いにおける敵の総大将で、趙三大天の一人。さらに自らを“武神”と称し、人の域を超えてた武を持つ存在だった。

 信は龐煖の一撃を受け気を失い、仲間の多くもやられ壊滅状態。信を抱えなんとか脱出したものの、万極の執拗な追撃を受ける飛信隊。山を逃げている途中、田永は「隊員が何人死んじまおうがそいつさえ生きてりゃ 飛信隊は死なねェんだからな」と信を抱える尾到と尾平に語り、そして沛浪は万極たちの目を自分たちに引き付けようとする。

 このとき「甘く見てるとその首たたき落とすぜ」と万極に対し大見えを切った沛浪は、非常に渋くてカッコよかった。

 仲間の犠牲により一度は敵から逃れた尾到と尾平だったが、二人とも傷が深く、自分たちの血を辿って迫る追手に尾平も自らを囮になり、弟・尾到に信を託す。

 信を抱える尾到も満身創痍……傷はやはり致命傷であった。目を覚ました信に「大勢の仲間の思いを乗せて天下の大将軍にかけ上がるんだ」と自分たち仲間の思いを託し、そして死んでいった。

 この逃走劇は、まさに途中田永が言ったように、飛信隊の皆が自分の命を捨て信を生かすためのみを考えて動いていた。

 

 今回は『キングダム』飛信隊の礎を築いた古参メンバー初期の名シーンを振り返ってきた。飛信隊のメンバーは、その結成時から信という男に惚れ、彼の「大将軍になる」というでっかい夢をともに見て戦っているように感じる。

 そして、いかなるときも道半ばで犠牲になった者たちの思いも乗せて戦っているのが印象的だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3