■腹など空かぬ!ワノ国の大名たちの生き様

 最強の生物・カイドウとの戦いを描くワノ国編は、どんな状況でも弱い姿は見せない侍の生きざまも見どころだ。そんな生きざまがよく分かるのが、カイドウの子ども・ヤマトの幼少期のエピソードが描かれた101巻1024話「某(なにがし)」である。

 ヤマトは父のカイドウに反発を続け、ワノ国の侍・光月おでんに憧れていた。そんなヤマトをカイドウは岩屋に閉じ込めてしまう。そこにはカイドウに敗北した3人の侍もいた。

 ヤマトは彼らにとって、おでんを殺した憎き敵の子どもである。すぐに殺されてもおかしくない状況で、カイドウは1人分の食事だけを持ってこさせた。何日も食事を与えていない大人3人と子ども1人に対して、食事は1人分だけ。おまけにカイドウは武器まで置いていき、彼らが殺し合いをするよう誘導していた。

 しかし、侍たちはお腹を空かせたヤマトに「食べなさい」と食事を差し出した。そして、「侍は腹など 空かぬものだ」と言い放ったのだ。ヤマトは「侍はすごいな」とこの言葉を信じて、泣きながらご飯を食べる。「えれェ家に生まれたな…」と笑みを浮かべる大名の横顔も印象的だ。

 当然、この言葉はウソだ。彼らはその後、ヤマトを生かして未来の戦いにつなげるために、満身創痍の体でカイドウに挑んで散っていった。侍らしくかっこいい生きざまを見せた彼らのウソには、胸をしめつけられてしまう。

 

 今回のかっこいいウソを見ると、冒険やバトルだけでなくキャラたちの生きざまも、『ONE PIECE』の見どころであることがよく分かる。麦わらの一味はもちろん、それ以外のキャラのカッコよすぎる名シーンからも目が離せない。

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