『ONE PIECE』は単純な冒険ストーリーだけでなく、人間ドラマも魅力の作品だ。また麦わらの一味だけでなく、脇役のキャラにもしっかりと見せ場が作られているのもスゴいところである。
今回は脇役がかっこいいシーンの中から、心揺さぶられる「ウソ」が出てくるものに注目して紹介していこう。それぞれの「カッコ良すぎるウソ」をぜひ味わってほしい。
■たとえ都市が滅びることになっても……モコモ公国のウソ
まずは、81巻816話「イヌvs.猫」で登場したカッコ良いウソだ。巨大な象の背中にある、常に移動する島「ゾウ」には、獣の姿をしたミンク族が住む「モコモ公国」があった。そこを襲撃したのが、百獣海賊団の大看板・ジャックだ。
その目的はワノ国の忍者・雷ぞう。ミンク族が彼を匿っているという情報を得て、ジャックは国中に毒ガスを撒き、国民を拷問し始めるのだった。国の王であるイヌアラシ公爵とネコマムシの旦那を磔にするシーンは、思わず目を背けたくなるほど残酷だ。
国民たちは雷ぞうに関する情報を持っていないと伝えていた。いくら知らないと伝え続けても、ジャックは拷問の手をゆるめない。サンジたちが到着した時にはすでに、都市は崩壊していた。
やがてルフィたちが到着すると、一味はこの地にやってくる予定だった錦えもんやカン十郎をなんとか遠ざけようとする。国を滅ぼした原因ともいえる「侍」を皆に会わせるわけにはいかないと考えたのだ。しかし、ミンク族のもとに彼らがたどりつくと、イヌアラシ公爵とネコマムシの旦那は驚きの行動を取る。
「お待ちしていた…」「雷ぞう殿は… ご無事です!!!」と涙ながらに言って膝をつくふたり。そう、雷ぞうのことを知らないというのは、まったくのウソだったのだ。この場面を目の当たりにしたウソップは、驚きのあまり「全員が知ってたのか!?」「お前らみんな!!! 死ぬトコだったんだぞ!!!!」と叫ぶ。それに対し、ネコマムシの旦那は「何が滅ぼうとも 敵に“仲間”は売らんぜよ!!!」と笑顔を見せるのだった。
この事実が明かされるシーンでは、鳥肌が立ってしまうほどの驚きと感動が押し寄せる。ルフィやゾロでさえも驚きを隠せないほどの命がけのウソだった。
■恩人たちを逃がすため!ドレスローザ国民のウソ
ドンキホーテ・ドフラミンゴとの戦いを描いたドレスローザ編。ルフィはドフラミンゴの悪事を暴き、ドフラミンゴの支配からドレスローザ王国を解放した。かっこいいウソが登場するのは、80巻799話「親と子」での事だ。
ルフィたちがいざ出航しようというとき、海軍本部大将・藤虎が行く手を阻む。藤虎の能力で瓦礫がルフィたちの頭上に浮かび、いまにも落下してこようとしていた。仮にうまく逃げて船を出せたとしても、無数の石を受けてあっという間に沈んでしまうような状況だ。
そんな中、そこに激怒した国民が現れる。彼らは「どけ海軍!!お前達の世話にはならねェ!!!」「おれ達の手で海賊共はふり払う!!!」と藤虎に言い放つと、「船を出せ 沖まで追うぞ!!!」とルフィたちの船を追い立て始めたのだ。
しかし、これはルフィたちを逃がすためのドレスローザ国民のウソだったのだ。彼らは国を救ってくれた英雄たちに感謝しながら、晴れやかな笑顔で罵声を浴びせて港に集まっていく。
この国民のファインプレーのおかげで、ルフィたちは無事に出航して新たな冒険に踏み出すことができた。一歩間違えれば、自分たちも攻撃に巻き込まれかねない危険な状況だった。これがサカズキであれば、オハラの時のように国民ごと海賊を殲滅していたかもしれない。
しかし、藤虎は国民の行動に心を打たれ、攻撃をやめてしまう。おまけに「餞別でござんす」とルフィ達の敵船団にガレキを叩き込むオマケ付きだ。彼は国民のウソに気が付きながらも、ルフィたちを見逃したのだ。恩人たちを助けるための国民の決死の行動にも、藤虎の気付かないフリにもほっこりした気持ちになる。多くの人のウソが生み出した最高の結末だった。