■誰より射撃が得意だけど、ある意味向いてない?『ドラえもん』野比のび太

 最後は『ドラえもん』(藤子・F・不二雄さん)の野比のび太を見てみよう。勉強も運動もできない落ちこぼれ小学生ののび太だが、誰にも負けない変わった才能をいくつか持っている。

 そのひとつが射撃だ。漫画『大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史』では、殺し屋との撃ち合いを制するほどの才能を発揮していた。

 のび太の射撃にまつわるエピソードは非常に多いが、ここではコミックス第24巻「ガンファイターのび太」の話を中心に語りたい。タイムマシンで西部劇時代のアメリカに飛んだのび太が、保安官のいない町を守るガンマンになる話だ。

 のび太は最初、保安官になることを拒否する。その理由は“自分に撃たれた人が死んじゃう”という思いからだ。いつもはドラえもんに頼ってばかりののび太が「自分が撃たれるかも」とはまったく考えないあたりに、射撃への自信が滲み出ている。

 最終的には助けに来たドラミから人を眠らせる銃「ドリームガン」を受け取り、のび太は町を襲うならず者30人を全員撃ち抜いて眠らせ、そして現代に帰ったところで話は終わる。

 殺す心配がない「ドリームガン」を手にした途端、瞬く間に敵を倒してしまうのび太の姿が印象的だ。人を傷つけたくないその優しさは、ある意味で射撃に向いていないともいえるだろう。

 

 拳銃にはロマンがある。機能美あふれるフォルムや的を撃ち抜く銃弾に見惚れる人は多く、それを手足のように使いこなすガンマンには憧れの眼差しを向けたくなるものだ。

 その心理の対象は現実でも漫画でも変わらない。だからこそ「無課金おじさん」は世界中で人気になり、今回紹介した銃使いは人々に長年愛されているのだろう。

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