■「ビグ・ザムは私が預かる。フフフ、こうも簡単にソロモンが落ちるとはな」
続いては、ランバ・ラルの上官でもあったドズル・ザビ。「やらせはせん! やらせはせんぞ」の名言でも知られる、ザビ家の三男である。
ジオン公国軍が次第に劣勢に立たされつつあるなか、ドズルは宇宙攻撃軍総司令官としてソロモン要塞の防衛にあたる。しかし、連邦軍の「ソーラ・システム」による照射攻撃を受け、一気に窮地に立たされた。
要塞の陥落は免れないと悟ったドズルは、戦闘目標をソロモン防衛から敵主力艦隊のせん滅に切り替え、巨大モビルアーマー「ビグ・ザム」での特攻を決意する。
そしてドズルはビグ・ザムに同乗していた部下たちに、「遺憾ながらソロモンを放棄する」「操縦系を切り替え、私のところへ回せ。おまえらも各個に脱出しろ」と伝える。なにか反論しようとする部下を制し、「無駄死にはするな」と念を押した。
なおも不服そうな部下の視線を無視し、ドズルは「ビグ・ザムは私が預かる」「フフフ、こうも簡単にソロモンが落ちるとはな」と自嘲した。
ソロモン要塞を守りきれなかった悔しさはあれど、指揮官として冷静に戦局を見極め、部下たちには迅速な撤退を命じたシーンである。ともすれば、ソロモンと命運をともにしようとする部下もいたはずだが、ドズルらしい強引な態度でそれを許さなかった。
ソロモン要塞の防衛を任された指揮官の最後の責務として、たったひとりビグ・ザムでしんがりをつとめ、友軍が撤退するまでの時間稼ぎを行ったドズル。彼こそ、まさに上官の鑑のような男に感じた。
『機動戦士ガンダム』の劇中には、彼ら以外にも尊敬に値する上官キャラたちが登場する。それに一年戦争時は若い士官だったブライト・ノアなども、その後の作品で立派に成長した姿を見せた。
子どもの頃にアニメを観たときは何も感じなかったが、大人になってからあらためて見直すと刺さるセリフやシーンがたくさんあることに気づく。皆さんは、どのようなセリフが一番印象に残っているだろうか。