いまや国民的アニメとなった『クレヨンしんちゃん』で、主人公・野原しんのすけ役を務める声優・小林由美子さん。国民的人気キャラクターを演じるようになって、この夏で7年目となる。そんな彼女に『クレヨンしんちゃん』という作品、そして「しんのすけ」というキャラクターへの想いと覚悟を聞いた。
――アニメ『クレヨンしんちゃん』で小林由美子さんが野原しんのすけ役を担当するようになって7年目になります。ここまで演じてきて、『クレヨンしんちゃん』に対する印象は変わりましたか?
小林 アニメ『クレヨンしんちゃん』は30年以上続いている番組で、私はまだまだ7年目。本当に1年1年いろいろな経験を積ませていただいて、しんちゃんを通して、いろいろな経験をして、『クレヨンしんちゃん』がより好きになりました。今じゃ『クレしん』オタクになっていて、家の中がグッズで埋め尽くされています。新しいグッズが出るとすぐに買っちゃうんです(笑)。
――しんちゃんを演じるにあたって、大切にされていることはどんなことでしょうか?
小林 矢島晶子さん(初代・野原しんのすけ役/現在は「うえち あき」として活動)から受け継いだ、野原しんのすけのキャラクターをものすごく大切にしています。そこから7年という時間をしんのすけとともに過ごさせてもらいましたが、この7年の間に出会った子どもたちにとっては、私が関わったしんちゃんが、彼らにとってのしんちゃんなんだなと思うと、よりいっそう身の引き締まる思いです。この7年で、本当にたくさんの子どもたちに出会えたんだと思うと、すごく嬉しいですし、しんちゃんと子どもたちに私が育ててもらったなと感じています。
――7年前に野原しんのすけ役を引き受けたときと現在で、しんちゃん役へのアプローチで変わったことはありますか?
小林 矢島さんのしんちゃんは完璧で、矢島さんにしか作れないしんちゃんだったんです。矢島さんの素晴らしい才能と、さらなる努力によって生まれた野原しんのすけは、多くの方々の記憶に刻まれています。そんな野原しんのすけ役を7年前に受け継ぐことになったとき、私はがむしゃらになってやるしかなかった。矢島さんの声を再現しようと、声に固執してしまったときも正直ありました。でも、そうやって試行錯誤しているときに、『クレヨンしんちゃん』の現場のすばらしさに気づいたんです。
『クレヨンしんちゃん』のスタッフもキャストのみなさんも一流の方々ばかりで、何年にもわたって面白い作品を作り上げてきた実力ある方々がそろっている。そのメンバーの中に入れていただくことができたのだから、すごく恵まれているなって思えたし、そんな環境にいるのならば、楽しまなくてどうするんだと思ったんです。「野原しんのすけ」として、この現場をいきいきと楽しむことが一番大切なんだろうと。それに気づいたときから、毎週のアフレコが本当に楽しめるようになりました。
――自分ひとりだけでなく、まわりのみんなといっしょに野原しんのすけを作っていこうとお考えになったんですね。
小林 いまは毎週新しい台本を読むのがとても楽しいですし、カスカベ防衛隊のメンバーや野原家のメンバーとお芝居をすることを楽しんでいます。ぜいたくな……本当にぜいたくの極みですよ!
それはテレビシリーズだけでなく映画もそうで、毎回、台本がめちゃくちゃ面白いんですよ。面白さを毎年更新していて、本当にすごい制作陣だなと感じています。この面白さは、まず演じる私たちが楽しまなかったら、劇場に足を運んでくださるお客さんたちには伝わらない。そう思って、毎回、自分たちも楽しみながら収録をしています。『クレヨンしんちゃん』は大人たちが全力でふざけたことをやっている作品なんです。