アニメの中には、尺や演出といった様々な要因により、キャラクターの設定及び物語の展開が原作漫画から大きく変えられた作品が多々ある。中でも衝撃的なのが、登場人物の生死の違いだ。
漫画では天寿を全うしていた『幽☆遊☆白書』の幻海師範や、日本ダービー後に命を落としていた『みどりのマキバオー』のチュウ兵衛のように、アニメでは生きているのに漫画では死亡しているというキャラも多く、漫画・アニメの片方だけを追っていた視聴者はその違いに驚くこともあるだろう。
今回は、彼らのように漫画とアニメで異なる生死が描かれたキャラを見ていこう。
■ママとしての決断に涙…『約束のネバーランド』のイザベラ
2016年に『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった白井カイウ氏・出水ぽすか氏の人気漫画『約束のネバーランド』。
アニメは2019年と2021年の2期にわたって放送されたが、同アニメは大幅な改変に賛否の声があがった。というのも、2期で「ゴールディ・ポンド編」が丸ごと削られ、人気キャラのユウゴも登場しなかったのである。さらに重要人物であるイザベラの生死も違う。
彼女は元食用児の身なれど生きるために「ママ」になった人物で、子どもたちにとってのママであり鬼にとっての優秀な食用児飼育監。脱走を企てる子どもたちを阻止すべく素晴らしい立ち回りを見せるが、最終的に5歳以上の子どもに逃げられてしまう。
自由を求める彼らに過去の自分を重ねたイザベラは、「行ってらっしゃい 気をつけてね」と優しく見送る。その後、処分を逃れた彼女は上級職のグランマとなり、最終局面で鬼側を裏切って子どもたちの味方となる。
と、ここまでは大体同じ展開なのだが、原作では、鬼の残党の奇襲から子どもたちを守り致命傷を負ってしまう。本当は誰よりも子どもたちを愛していたイザベラは、自分の過去の行いを悔いながら「だぁいすきよ」と最期の言葉を残し命を落とした。
一方、アニメではこの“奇襲してくる鬼”が出てこない。イザベラは鬼の世界に残るエマらから「人間の世界で家族を守ってほしい」と託され、残りの子どもたちとともに生き延びた。
アニメでの生存エンドは嬉しい。だが、鬼に支配され冷酷にならざるを得なかった彼女が、漫画で死の間際に見せた人間らしさ、子どもたちへの深い愛にグッときたという読者は多いだろう。
■複数ルートがある『新世紀エヴァンゲリオン』の鈴原トウジ
『新世紀エヴァンゲリオン』は、1995年10月に放送されて以来、今なお根強い人気を誇る名作アニメで、『月刊少年エース』1995年2月号にてキャラデザを担当していた貞本義行氏によるコミカライズ作品が先行スタートした。
『エヴァ』は、テレビアニメや新劇場版、そして漫画版でストーリーやキャラの設定が大きく変わる作品だ。キャラの生死は基本的には変わらないが、漫画版での鈴原トウジは違った。彼はシンジのクラスメイトであり、精神面を支えてくれる良き友人である。
フォースチルドレンに選出されたトウジはEVA3号機に搭乗して起動実験に挑むも、機体がバルディエルに浸食されてしまう。シンジはゲンドウの撃破指示を「パイロットが乗っている」と拒否するが、ダミーシステムを起動され、初号機が強制的にEVA3号機を破壊しエントリープラグを握りつぶす。ここまでの流れはテレビアニメも漫画も同じだが、漫画版ではこの後トウジを待ち受ける運命が悲惨なものになっていた。
アニメでの彼は、足を欠損しつつも生きている。しかし、漫画では頭部裂傷、右足切断、ひ臓破裂により死亡しているのだ。頭から血を流し、目を開けたまま絶命したトウジの姿はショッキングすぎた。
しかも、アニメではシンジがEVA3号機パイロットの名前を知ったのは撃破後だったが、漫画では事前にトウジが「パイロットをやるなら妹を本部の医学部に転院させてくれると言われて引き受けた」とシンジに伝えているのである。つまり、シンジはEVA3号機にトウジが乗っているのを知った状態で、自らのEVA初号機が彼を殺すところを見ていたのだ。
あまりにも可哀想すぎたトウジの運命。アニメもきつかったが、漫画はさらにその上を行く地獄描写だった。