■『ジョジョの奇妙な冒険』敵を倒すよりも娘の命を選んだ空条承太郎
荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)にも、父親が子どもを守るために命を投げうったシーンがある。それが第6部でのプッチ神父との最後の戦いだ。
プッチ神父のスタンド「メイド・イン・ヘブン」は生物以外の時を加速させるうえ、その時の中を自由に動くプッチ神父の姿は誰も捕らえることができない。そのため、承太郎の時を止める能力が唯一の対抗策でもあった。
そこでアナスイが、自身を囮にしてプッチ神父の攻撃を受け、その瞬間に時を止めるという作戦を立てる。承太郎はもちろんその作戦に乗った……のだが、プッチ神父は時が止まる直前、徐倫に向かって大量のナイフを投げつけていた。
このままプッチ神父を攻撃すると徐倫はナイフの餌食、徐倫を助けるとプッチ神父を取り逃す。その選択をわずか数秒の間に迫られた承太郎は、徐倫を助ける決断をする。ナイフを振り払い、続いてプッチ神父に攻撃を仕掛けた承太郎だったが、「『二手』遅れたようだな…………」とプッチ神父も言っている通り、まるで間に合わなかった。そして、プッチ神父の攻撃をまともに食らってそのまま命を落としてしまう。
承太郎の死は、「あの承太郎が死ぬの?」とかなりの衝撃だった。きっと助けたうえで勝利するだろうとどこかで期待してしまっていたからだ。できることなら、生きてその後の徐倫の行く末を見守ってほしかった。
父親キャラが子どものために散っていくシーンは、ただ感動的なだけでなく、未来につながるものになっている。そうやって守られた子もまた、誰かのために命をかけられる存在になっていくのだ。だからこそ、いつまでも消えることなく心の中に残るのだろう。