漫画やアニメではしばしば、子どものために命がけで戦う親たちが登場する。彼らにとって愛するわが子は生きる力であり、かけがえのない存在だ。
大切な子が窮地に立たされた時、親たちは自分の命と引き換えにしてまで守ろうとする。その子の未来を本気で願っているからだ。そんな姿からは強い覚悟や信念、そして何より深い愛情が伝わってきて、命を燃やすということの意味を教えてくれる。
今回はそんな中から父親キャラに注目し、彼らが子どものため自らを犠牲にしてカッコよく散っていったシーンを紹介したい。
■『ONE PIECE』どんな攻撃にも耐えた白ひげの勇姿
尾田栄一郎氏による『ONE PIECE』(集英社)では、さまざまな形の家族愛が描かれている。その中で白ひげは、家族のような船員たちのために命を張る男だった。
白ひげは船員全員を自身の息子として、我が子のように可愛がっている。だからこそ、そのひとりであるエースが海軍に捕まり処刑が決まった時には、海軍本部へ殴り込みをかけた。
海軍三大将が待ち構えている場所へ乗り込むなど、まさに飛んで火に入る夏の虫。白ひげは圧倒的不利な状況にもかかわらず、正面からの突破を図る。しかし、ルフィの活躍もあってエースの奪還には成功したものの、白ひげ海賊団は海軍の猛攻によって勢力を失っていた。すると重傷を負っていた白ひげは、最期の船長命令として「お前らとおれはここで別れる!!!!」「全員!! 必ず生きて!!! 無事 新世界へ帰還しろ!!!」と叫ぶのだった。
すべては息子である船員たちを逃がすため……。その代償は大きく、サカズキに顔半分を吹き飛ばされ、黒ひげ海賊団の一斉攻撃により銃弾や斬撃を数え切れないほど受けて力尽きる。しかし、背中は無傷で逃げ傷は一切無し。すべての攻撃を正面から受け止めていた。
この白ひげの姿には白ひげ海賊団の面々だけでなく、読者も漢の生きざまを見せられ感銘を受けたはずだ。昔から家族を欲しがっていた白ひげにとって船員は、何物にも代えがたい存在だった。そんな家族を命がけで守った彼の勇姿には涙が止まらない……。
■『NARUTO』生まれたばかりのナルトを守るため命を捨てた波風ミナト
岸本斉史氏による『NARUTO-ナルト-』(集英社)も家族愛が詰まった作品で、特に主人公であるうずまきナルトに対する両親の愛は印象的だった。それが描かれているのが、ナルト誕生時のストーリーである。
四代目火影である波風ミナトと、尾獣・九尾の「人柱力」であるうずまきクシナの間に生まれたナルト。クシナは体内に九尾を封じられていたのだが、出産の際にできた隙を狙われ、九尾の力を狙う者の手でその封印が解かれてしまう。
こうして解放された九尾によって、木ノ葉隠れの里は壊滅状態へと追い込まれそうになり、それを阻止するために動いたのがミナトだ。「息子のためなら死んだっていい… それは父親でもできる役目だ」と語って、愛する妻子のため自身の命を犠牲にしようとする。
ミナトは「屍鬼封尽」によって九尾の半分を自身と道連れにし、残りの半分はナルトの体へ封じるという選択をした。これによって彼は命を落とすのだが、おかげで里とナルトは救われた。しかしその際、クシナも九尾の攻撃からナルトを守り、命を落としてしまう……。
ナルトは誕生とともに両親と死別してしまった。悲しい別れではあるが、ミナトに後悔はない。最期の時にも、ボロボロになりながら穏やかな笑みを浮かべていた。本当はずっと側にいてナルトの成長を見守りたかったはずなのに……。もちろんそれはクシナも同様だ。
ミナトとクシナが亡くなるシーンを見た時、ナルトには幸せになってほしいとそれまで以上に強く願った。だからこそ、ナルトが最終的にヒナタと結婚し、息子のボルトや娘のヒマワリと過ごす姿が見られたことが嬉しい。