■救われなかった多数の命「終わりなき夏の物語」
コミックス8巻「終わりなき夏の物語」で、「終わりなき夏の惑星」へ降りた鉄郎とメーテル。そこはインセクター(昆虫人間)の住む星だった。2人はシャープスロックという昆虫の女王に捕まり、非常食にされそうになりつつもなんとか逃げ切る。
その後、999号に戻るも、列車はシャープスロックによって“まゆ”で覆われ大量の卵が植え付けられていた。当初、鉄郎は羽化した子どもたちを銃殺しようとするものの、「撃たないで おねがい」と懇願する様子を見て助けることに決める。
走り出した車内にて、子どもたちは鉄郎たちを襲わず、999号の椅子などを食べて生き永らえていた。しかしデリケートな体内構造のせいで、次々に命を落としてしまい、鉄郎たちはやむなく大量の子どもたちの亡骸を宇宙の海へ葬るのであった。
その後、生き残った1匹を助けるため、車掌は「終わりなき夏の惑星」へ戻ろうとするが、その1匹もメーテルの腕のなかで力尽きてしまった。
最初は鉄郎たちを子どものエサにしようとシャープスロックは目論んでいたが、しかし親虫と子どもたちのテレパシー通信内容を調べたところ、鉄郎が赤ん坊を銃殺せず助けたため、シャープスロックは“鉄郎たちを食べてはいけない”と子どもたちに教えていたことが分かる。
シャープスロックは子孫を999号に託したものの、結果的に子どもたちは全滅してしまった。可愛らしい子どもたちが、みな死んでしまうシーンはなんとも悲惨だ。
その子どもたちが宇宙の海に葬られる様子を見て、静かに涙を流すメーテルの姿も印象的なエピソードだった。
このように『銀河鉄道999』には、後味の悪いエピソードも登場する。しかし内容を見返すと、今の世界でも起こっているようなエピソードが多く、私たちに何か警鐘を伝えているようにも感じる。
本作が誕生したのはもう45年以上前になるが、今読み返してもそのメッセージは色褪せることがないのだ。