『銀河鉄道999』に登場する「後味の悪すぎるエピソード」戦争を観光材料にする「永久戦闘実験室」、子どものため犯罪に手を染める母親「砂の海のロンメル」もの画像
銀河鉄道999 [Blu-ray](東映アニメーション・東映ビデオ)/(C)松本零士・東映アニメーション

 1977年に連載が開始された、松本零士さんの名作『銀河鉄道999』は、主人公の少年・星野鉄郎と、謎の美女・メーテルが銀河超特急特急999号に乗って旅をしていく壮大なSF作品である。

 旅の道中、鉄郎とメーテルはさまざまな人物や謎の生命体と出会う。なかには友人になった人物もいるなど、心温まるエピソードもあった。しかし、“こんな悲惨な終わり方があるのか……”と、思わず絶句してしまうような後味の悪いエピソードも存在する。今回は数あるエピソードのなかから、読者がショックを受けた残酷な終わり方をする話を紹介したい。

■戦争を観光材料にする残酷な世界「永久戦闘実験室」

 コミックス第7巻「永久戦闘実験室」では、物語序盤からショッキングな展開が待っている。「ライフルグレネード」という駅に降り立った鉄郎とメーテル。この星は“戦争を観光材料”にしている星だった。鉄郎はホテルでの食事の際、戦闘中の兵士の様子を観賞させられショックを受ける。

 その後、2人のことを呑気な観光客だと勘違いした兵士・ゼーダは2人を問い詰め、銃で脅す。しかし鉄郎は“戦争なんて見たくなかった”と伝え、誤解を解くためにゼータと行動をともにすることになった。

 ゼーダは次第に鉄郎に心を許し、この星の終わらない戦争の悲惨さを訴え、自分が反乱軍となって戦うことを打ち明けた。その後ゼーダは、鉄郎を敵の襲撃から守ったあとに命を落としてしまう。

 死の間際、ゼーダは「もうじき この星の歴史が変わる。おれたちが 力を合わせて歴史を変えたんだ」と言った。鉄郎はせめて反乱が成功していることを信じたが、星を離れたあと列車のなかで反乱軍が皆殺しにされ、結局状況が変わっていないことに衝撃を受けるのであった。

 幸い平和が続く日本では、あまり身近には感じられないエピソードかもしれない。しかしSNSをはじめとしたネット上では、日々残酷な動画や写真が投稿されており、それを興味本位で視聴する人がいるのも事実だ。“戦争を観光材料”にするような残酷な社会は、私たちの周りにも意外とあるのかもしれない。

■子どもと脱出するためには犯罪だってする「砂の海のロンメル」

 コミックス第13巻「砂の海のロンメル」では、悲惨な親子の結末が描かれている。「砂漠のキツネ」という駅に降り立った鉄郎とメーテル。そこはホテルのシャワーまで砂が出るという、砂だらけの星だった。

 ホテル滞在中、鉄郎は砂から出現した謎の女性にトランクごとパスを盗まれ、砂のなかに引きずりこまれてしまう。鉄郎を誘拐した女は“砂漠のキツネ”・ロンメルの部下と名乗り、メーテルのトランクも砂に投げるよう要求して荷物を奪った。

 その後、鉄郎は砂の流れに乗り、ロンメルの戦闘指揮車によって助けられる。鉄郎は尋問を受けたあと気を失い、気づくとホテルのベットにいた。しかしベランダ越しに見えたのは、鉄郎のパスを奪った女性の処刑された姿であった。

 メーテルはその女性が2人のパスを使い、大切な人と一緒にこの星を出ようとしていたのでは……と推測する。その言葉通り、999号が飛び立ったあと「かあさん…かあさん…」と呼びながら、1人で夜の砂漠をさまよう子どもの姿が描写されていた。

 女性にとっては砂漠の星での生活は過酷なうえ、ロンメル率いる砂漠軍に従う生活も苦しかったのだろう。鉄郎たちのパスを強奪してまでも、この星から親子で逃げ出したかった女性の気持ちを思うと非常につらくなるエピソードだ。

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