■1話から両想いなのに…それからが途方もなく長い『名探偵コナン』
現在、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が大ヒット上映中の、青山剛昌さんの『名探偵コナン』。本作は1994年より『週刊少年サンデー』(小学館)で連載が開始され、コミックス105巻まで刊行されている。
主人公の江戸川コナンこと工藤新一は、紆余曲折を経て幼なじみの毛利蘭と現在はカップルとなっている。だが、その道のりはかなり長かった。
第1話「平成のホームズ」では、新一と蘭が遊園地デートをするシーンがある。ジェットコースターに乗る際に蘭とのキスシーンを想像し、ポーっとする新一。また蘭もギュッと新一の手を握るなど、登場当初から両想いなのが分かる。しかしここから2人が正式なカップルになるまで何十年も掛かるとは、このとき誰も予想していなかっただろう。
100巻以上ある作品の場合、第1話と現在の絵柄が異なることも多いが、『名探偵コナン』には大きな変化はないように見える。今では蘭のチャームポイントでありトレードマークである“頭の角”こそないものの、昔も今も優しい絵柄を書き続ける青山さんの高い画力が分かる作品でもある。
■シリアスで美しい主人公に衝撃『パタリロ!』
魔夜峰央さんによる『パタリロ!』は、1978年より『花とゆめ』(白泉社)で連載が始まった作品だ。少女漫画のなかでも長期連載が続くギャグ漫画として知られ、現在はコミックス104巻まで刊行されている。
近年描かれている主人公・パタリロのビジュアルは、目や口はほぼ細い線1本で描かれており、全体的に丸いフォルムで大変コミカルだ。
しかし第1話「美少年殺し」で描かれているパタリロは、細めのスタイルにくっきりとした二重まぶたが美しい。また、真面目なことを言われるとほぼすべてボケて返すシーンが多い印象のパタリロだが、第1話では違った。
大臣に命を狙われショックを受けたパタリロは、慰めようとしたバンコランの手を振りほどき「さわるな!同情なぞいらんわい!」と叫ぶなど、シリアスな展開が続くのだ。また、第1話ではパタリロの美しい修正写真が登場するのだが、「どこをどう修正したらこうなるんだ!?」と、ツッコミを入れるバンコランの姿も登場している。
現在でも通じるようなノリツッコミを描いた『パタリロ!』は、まさに先見の明がある作品と言えるだろう。
漫画は人気作品であるほど発行巻数は多いが、100巻を超える作品はまだ少ない。そのため、近年の内容や絵のタッチなどを思い浮かべることはできても、第1巻の内容や描画を知らないという人も多いだろう。
時々は歴史ある作品の第1話を振り返り、登場当初はこんな設定だったのかと驚きを持って作品に触れてみるのもおススメだ。