■青島と同じように自身の感情を出していくようになる
第8話「さらば愛しき刑事」で室井は、現場の刑事を不要とする科捜研のプロファイリングチームに憤りを感じながらも、上の方針に従わざるを得ない状況となる。
同チームが挙げた犯人像と、ベテラン刑事・和久平八郎(いかりや長介さん)が長年の“刑事の勘”で挙げた犯人像が異なったため、室井は両者の犯人像ともに任意同行を求めるよう命令を下す。自身の立場をうまく使って、所轄のいち刑事の意見を尊重したのだ。
また、ここでの事情聴取では青島と同じように真犯人を力づくで問い詰めようとし、感情むき出しの人間らしい姿を見せていた。これには同チームに“天然記念物”などと揶揄されながらも地道に捜査を続けてきた、和久への思いが少なからずあったように思う。
このように室井は湾岸署メンバーからの影響もあり、ドラマが進むに連れて点数稼ぎをせずに感情を表に出すようになっていく。そんな姿はカッコ良く、やはりグッときてしまったものだ。
■嘘を付いてまで自分が責任を取る覚悟に痺れてしまう
最終話である第11話「青島刑事よ永遠に」では、青島が後輩の警部・真下正義を銃撃した被疑者の安西昭次に発砲したことが問題となり、室井は刑事局長や監察官から彼を処分しろと命令される。ここで室井は発砲は青島一人のミスであると告げ、いわゆる“トカゲの尻尾切り”をすることに。
憤る青島やすみれだったが、この一連の流れは室井の作戦だった。別の場所で処分を下すフリをして湾岸署を抜け出し、独自捜査に向かうために嘘を付いたのだ。これは自分が悪者になることで相手を出し抜く、青島の“真似”だった。一生懸命に演技をし、冷や汗をかく室井の姿は滑稽でもあり、同時に頼もしかった。
「私も足で捜査する」その言葉通り、青島とともに東京拘置所に向かう室井。その後も、眉間に険しいシワを寄せ、アドリブが利かないながらも青島の大胆な嘘の片棒を担ぎながら、捜査を進めていく。
最終的に容疑者・安西の取引場所を掴んだ2人。室井は安西が来るであろう店をなんと警視庁で買い取るとオーナーに提案するなど、青島もビックリの作戦を取るほど思い切った行動に出る。これは間違いなく青島はじめ、湾岸署メンバーの影響だろう。
それにしても、懲戒免職覚悟の室井の行動の数々には痺れる。ここまで責任を取ってくれる上司の元で働きたいと思ってしまう。
振り返ってみても、やはり『踊る大捜査線』は面白いドラマだ。青島の熱血ぶりはもちろん、さまざまな刑事たちにスポットが当てられているのが本作の見どころであり、視聴者は室井のように、彼らの生き様に感動するのだ。
ドラマ当初の和久さんとほぼ近い年齢になった室井だが、新作映画ではどのような姿を見せてくれるのだろうか。待ち遠しいものだ。