■あの名作のプロトタイプ!尾田栄一郎『ROMANCE DAWN』
『ONE PIECE』の作者である尾田栄一郎さんは、本誌読み切りデビュー作でこの有名作のプロトタイプを描いた。その作品は『週刊少年ジャンプ』1996年41号に掲載されている。タイトルは『ROMANCE DAWN』であり、主人公の名もモンキー・D・ルフィとなっているのだ。
『ONE PIECE』と同じく、本作のルフィは麦わら帽子を被っている海賊。彼がアンという女性と出会ったのをきっかけに、怪鳥や海賊との戦いに巻き込まれるというストーリーである。
本作にはルフィが麦わら帽子を「おれの宝物だ」と言ったり、「俺は全身ゴム人間なんだ!!」と言って顔をびよーんと伸ばしたりするシーンがあった。ルフィのキャラクター造形は、この時点ですでに完成されていたのだろう。
翌年には『ONE PIECE』が始まり、第1話のタイトルが「ROMANCE DAWNー冒険の夜明けー」だったことも胸が熱くなる展開だった。
『ONE PIECE』という作品の魅力を余すことなく知る上で、『ROMANCE DAWN』は重要な作品だ。本作はコミックス『WANTED! 尾田栄一郎短編集』に収録されている。
■胸キュン展開が盛りだくさん!青山剛昌『ちょっとまってて』
『名探偵コナン』で国民的な人気を獲得している青山剛昌さんは、『YAIBA』や『4番サード』など幅広い作風でも知られる漫画家だ。そんな彼の本誌読み切りデビュー作は、青山さんの漫画家デビュー作でもある『ちょっとまってて』である。本作は『週刊少年サンデー』1987年4・5号に掲載され、SFとラブコメを融合させた作品となっていた。
物語の舞台はとある高校。主人公・高井豊は2歳上の恋人・阿部麻巳子と付き合っていたが、年の差のせいで悩まされていた。豊は高校生にして天才発明家だったために、タイムマシンを作って2年前に戻り、彼女と同じ年の恋人になろうとする。しかし、麻巳子がタイムマシンで未来に行ってしまったために、豊の計画は予想外の展開を迎える……。
単純なタイムスリップモノではなく、タイムスリップに伴う記憶の改変に抗おうとする豊の行動が主軸だ。作中に登場する麻巳子の「豊… 待っててね……」というセリフは、鮮やかなタイトル回収にもなっている。
ラブコメ展開も得意とする青山さんの作品らしく、胸キュン展開も盛りだくさんである。作画や伏線、予想できない展開など、デビュー作にしてすでに完成されている感があって驚かされてしまう。本作はコミックス『青山剛昌短編集 4番サード』で読めるため、要チェックだ。
今回は人気漫画家の「本誌読み切りデビュー作」を紹介してきた。その才能の片鱗がすでに確認できる本誌読み切りデビュー作は、独特の面白さがあって思わず引き込まれてしまう。いずれもそれぞれの短編集に収録されているので、ぜひ機会があれば読んでみてほしい。