『COWA!』に『カジカ』も… 今こそ映像化してほしい「天才・鳥山明」の“神作”短編の画像
映画『SAND LAND(サンドランド)』本ポスタービジュアル ©バード・スタジオ/集英社 ©SAND LAND製作委員会

『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』など国民的漫画を生み出した鳥山明さん。2024年3月には『SAND LAND』の新作アニメが劇場版に続き配信されたほか、10月からは『ドラゴンボールDAIMA』が放送開始され、大きな話題を呼んだ。

 上に挙げた3作は特に有名だが、それ以外のアニメ化されていないものの中にも根強い人気を誇る作品は数多い。今回はそんなまだアニメ化されていない鳥山さんの「神作」を振り返っていこう。

■さまざまな良作が揃う『鳥山明○作劇場』

 まず紹介したいのは『鳥山明○作劇場』だ。こちらは全3巻刊行された鳥山さんの短編集で、初期から90年代の読み切り作品や連載作品が収録されている。この作品には、鳥山さんの作風がよく分かる漫画が数多く収録され、ファンならワクワクしてしまうこと間違いなしである。

 中でも女性が主人公の『ギャル刑事トマト』は、鳥山さんの初期の傑作だ。本作は、同じく女性を主役とする『Dr.スランプ』が生まれるきっかけになった作品でもある。ハチャメチャな刑事・赤井十真都(トマト)の活躍を描いたコミカルな作品で、個性豊かな登場人物が繰り広げるドタバタ劇には、ギャグ漫画の名手でもある鳥山さんのセンスが光っていた。

 他にも、人気絶頂期の1981年に描かれた宇宙冒険漫画『POLA&ROID』や『ドラゴンボール』の世界観によく似た『騎竜少年(ドラゴンボーイ)』などの作品も魅力的である。

『鳥山明○作劇場』の中には、『GO!GO!ACKMAN』や『貯金戦士 CASHMAN』など、ジャンプフェスタなどのイベントでアニメ化された作品もあるが、それ以外のほとんどは未アニメ化という非常にもったいない状況なのだ。

 鳥山さんはコメディからSF、バトル漫画、冒険漫画など、幅広い作風をカバーしている天才漫画家である。その才能がいかんなく発揮されたこの短編集は良作揃いで、機会があればアニメ化してもっと多くの人に知ってほしい。

■作者お気に入りの短編漫画『COWA!』

『COWA!』は1998年に刊行された、1巻で完結する短編漫画だ。『ドラゴンボール』が終了してから初めての連載作品であり、短編集中連載として終えられた。本作は『ドラゴンボール』とはがらりと雰囲気を変え、ギャグ漫画に路線を戻している。

 どちらかというと『Dr.スランプ』と雰囲気が近いため、子どもたちにも受け入れやすい内容となっている。鳥山作品と言えば王道冒険漫画というイメージを持っている人も多いが、実は本作のようなシュールなギャグ漫画こそ鳥山作品の魅力ともいえると思う。

 本作はおばけたちが住む世界が舞台で、吸血鬼と「コアラ男」の血を引く少年・パイフーがある薬を探すために冒険に出るストーリーとなっている。これまでの作品とは違い、絵本を思わせるやわらかいタッチの絵柄で描かれているのも特徴だ。シンプルでありながら背景などの細部にまでこだわりが感じられるイラストは、何度見ても味わい深い。

 実は『COWA!』については、鳥山さん自身が「すべての作品の中でいちばん大スキなマンガであります」と過去に明かしている。そういった意味でも、ぜひともアニメ化して多くの人にその魅力を知ってほしい作品だ。

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