バトル漫画の防御の技には数多くの種類があり、それを強みとするキャラもいる。あらゆる攻撃を見切って受け流す……。『北斗の拳』のトキが雑魚キャラに使った流れるような技はその最たるものだろう。
しかしそうした技には、攻撃をギリギリまで引き寄せる高等技術が必要とされ、少しでも見切りを間違えると死に直結するともいえる。五感を研ぎ澄ませ、度胸を持って待つ姿勢がなければ決して成功しないというわけだ。
かなりハードルやリスクが高いかもしれないが、見ている側からすると決まった時の爽快感といったらない。
そこで今回は、相手の技を無効化する防御技を得意としているキャラを紹介していきたい。
■静かに攻撃を受け流す…『鬼滅の刃』冨岡義勇の「凪」
まずは、「無限城編」の劇場版制作が決定した吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』(集英社)の冨岡義勇の防御技から紹介していこう。
冨岡は炭治郎の兄弟子であり「水の呼吸」の使い手で、柱の中でも攻守ともにバランスのとれた戦い方をしている。あらゆる局面で冷静沈着に対応できるので、熱くなりやすい炭治郎にとって良いお手本ともいえるだろう。
そんな冨岡が見せた最大の防御技が、全集中・水の呼吸 拾壱ノ型「凪」である。これは鬼舞辻無惨の配下・十二鬼月「下弦の伍」の鬼、累との戦いの中で披露されたが、その描写に驚かされた人も少なくないだろう。
累はあらゆるものを切り裂く最硬度の糸を無数に出し、逃げ道がない状況を作り出した。炭治郎がヒノカミ神楽を使用してようやく切ることができた糸を、冨岡はどうやって防ぐのか……。すると、冨岡が小さな結界のようなものを自身の間合いに張った次の瞬間、辺りの糸があっさりと切られてしまう。
凪という言葉は、風がやみ波がなくなる穏やかな状態の水面のことを指し、そこからもあらゆる攻撃の勢いを殺してしまうというのが察せられる。累は何が起こったのかを理解できず、そのまま首を切り落とされることになった。
「水」とつくだけあって、この呼吸は受け流すのに突出しているのだろう。さらに、この技は冨岡が自ら考案したものだというから、彼のすぐれた才がうかがえる。
今後公開される劇場版でも冨岡の活躍が見られると思うので、再び「凪」を使う局面に期待したい。
■地上最強の生物の攻撃を無効化!?『バキ』郭海皇の「消力(シャオリー)」
次は板垣恵介氏による『バキ』(秋田書店)に登場する郭海皇のエピソードだ。郭は中国拳法の頂点に立つ人物で、年齢はなんと146歳。見た目はヨボヨボの爺さんで、細くて小さいから、こんな状態で戦えるのだろうかと疑ってしまう。
しかし、郭は武を極めるためにありとあらゆる鍛錬を積んできた猛者。その豊富な経験から生み出された技が「消力(シャオリー)」だ。「消力」は読んで字の如く、あらゆる力をかき消す効果のある技なのだが、使いこなすのはかなり難しい。
この技は、相手が放つ攻撃が皮膚に触れた瞬間、あえて力を抜くことでその威力を吸収するというもの。余計な力が少しでも入っているとうまくいかないので、かなりの高難易度だといえるのだ。
郭は範馬勇次郎と対決をした時にこの技を初披露し、相手の攻撃を次々と無効化していた。一歩間違えれば即死という状況でこの技を出せるのがスゴい……。さらに、「消力」を利用した打拳も見せていて、一撃でコンクリートを粉砕してしまった。
他の例を挙げると、後に烈海王は「消力」をマスターして宮本武蔵に挑み、刀の攻撃に合わせて使用していた。しかし、残念ながら武蔵の剣速に対応しきれず、斬られてしまっている。
『バキ』には渋川剛気の合気も登場するが、防御というところで見ると、この技に勝るものはないだろう。